【FM玉手箱】見学会で感じたリアルな場の魅力。      安井建築設計事務所 東京事務所「美土代クリエイティブ特区」

【FM玉手箱】見学会で感じたリアルな場の魅力。      安井建築設計事務所 東京事務所「美土代クリエイティブ特区」

仲田 裕紀子   なかだ ゆきこ

JFMAジャーナル 編集長

認定ファシリティマネジャー

JFMAが主催している第20JFMA2026受賞企業「現地見学会」に応募して幸運にも抽選に当選し、「美土代クリエイティブ特区」を見学しました。「美土代クリエイティブ特区」とは、東京都千代田区神田美土代町にある安井建築設計事務所の東京事務所です。地域に開かれたオフィスとして、第20JFMA賞最優秀ファシリティマネジメント賞を受賞されています。

入居しているビルは、住友商事が東京進出の際に本社として利用していた築約60年のビルをリノベーションしたもの。それまで安井建築設計事務所の東京事務所は平河町の自社ビルだったそうですが、業務拡大による増員で周辺のビルに点在していたオフィスを2024年に美土代町に集約。同じ千代田区でも、永田町や国会議事堂に隣接する落ち着いた雰囲気の平河町に対して、神田は江戸時代から続く活気ある文化が息づき、大学や書店街にも近く多様性のある街です。移転後は神田祭にも参加して町内会や他の地域ともつながり、仕事にも結び付いているそうです。社員の服装も以前と比べてカラフルになったとか。

9階建てのうち、13階を使い、各階を吹き抜けや中階段でつなぎ、三層をひと続きにしたワンオフィスというコンセプトです。1階は路地側に大きな窓が設けられ、まちに開かれた空間です。人と人、地域を結ぶオープンイノベーションの拠点として、地域のイベントやコンサートなどが開催されています。イベントなどで使えるように備え付けられたキッチンは、普段は社員も自由に使えます。建築設計やまちづくりのプロ集団なので、一般の企業と比べて社員のファシリティに対するリテラシーが高いことも特長です。実際、ビルのリノベーションにあたっては、社内コンペが実施されて最優秀案が選ばれました。また植栽などのバイオフィリックデザインも企画から植物のメンテナンスまで社内の専門チームが担当されています。

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1階は、地域のイベントなどに活用されるまちに開かれたスペース

オフィスのコンセプトや運営は有志によるオフィス自治会が中心になり進められています。プロジェクトや働き方に合わせてデスクを自由に移動し、働く場を組み立てる「カスタムフィールド」や週1回のグループアドレスの運用など、オフィス運営の柔軟性の高さを感じました。オフィスをより良くするための提案は、社内の承認が得られればプロジェクトとして予算化されるそうです。予算獲得のためのプレゼンテーションにも力が入ります。オフィス自治会は、組織の行動計画(目標)である「『自由・自立・自主・自律・自治』による積極的な行動」を促し、「変化し成長するオフィス」を具現化する仕組みになっているといえます。

この他にもワーカー位置情報とBIMと連携した室内環境測定・環境コントロールシステム、シミュレーションと実測定のデジタル解析による自然通風の導入など、新しい技術を使った快適性の向上、ビルの環境負荷低減やCO2削減など、さまざまな試みがされています。

JFMA賞受賞講演を聴講し、受賞集を読んで事前に概要を理解していましたが、やはり現地を見学し、お話を聞くことで、新たな気づきも多く、リアルの大切さを実感しました。

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ビル1階の駐輪場
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ビルの地下1階 入居者専用ラウンジ  

JFMA賞 美土代クリエイティブ特区 まちにひらいた自主・自立の活動拠点 
https://jfma-journal.org/jfma-award/20_yasui_architects.html

「FM玉手箱」は、ファシリティマネジメントを実践するプロフェッショナルによるエッセイシリーズです。FMへの想いや知見を詰め込んだ“玉手箱”(=価値ある情報が詰まった箱)として、JFMAジャーナルオンラインでお届けしています。