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【FM玉手箱】「ワーケーションが地域を変える。 五島列島で感じたこと。」

【FM玉手箱】「ワーケーションが地域を変える。 五島列島で感じたこと。」

村上 俊博    むらかみ としひろ

設備管理サービス提供会社勤務 新事業開発担当

昨年、長崎県の五島列島を訪れた際、ワーケーションに対する見方が大きく変わる体験をした。五島市の商工雇用政策課から「滞在型のリゾート宿泊施設でのワーケーション」も視察できると薦められ、ある宿泊施設に立ち寄った。そこで私は五島市の現状を知り、改めてワーケーションの本質とは何かを考えさせられた。

五島列島は、いわゆる「国境離島」のひとつで長崎市から西に100kmほど離れた大韓民国との国境付近に位置し、日本の管轄海域の根拠となる重要な離島である。五島列島は離島と言う地理的条件のもとで、美しい自然や独自の文化を育んできた。その一方で、多くの地方都市と同様に人口減少という大きな課題に直面している。

特に印象的だったのは五島市が「人口減少に真正面から挑んでいる」という点だ。五島列島は近い将来に日本列島が直面する人口減少に伴うさまざまな社会問題をすでに迎えている「日本列島の縮図」と言っても過言ではない。五島市では人口問題を最大の課題と位置づけ、移住支援や雇用確保につながる産業振興の促進、さらに外国人向けの日本語学校の設置やワーケーションの誘致など関係人口の創出に積極的に取り組んでいる。

五島市から紹介されたその施設(カラリト)はリゾートにふさわしい風格ある建物に加えて、広大な海原を活かしたマリンスポーツや釣り、自然の中でのサイクリング、サウナなど豊富なアクティビティを心ゆくまで楽しむことができる五島列島を代表するリゾート型の宿泊施設であった。

ワーケーションに関しても細部にわたって配慮されていた。開放的なワークスペースや快適な通信環境が整備されているだけでなく、宿泊者同士や地域住民との自然な交流が生まれる仕掛けが随所に見られる。今回、伺った時も地元の小学生たちが社会科見学で訪れ、施設の若手スタッフと楽しそうに談笑していた。スタッフの多くは移住者で、宿泊施設を通してさまざまな方に接しながら五島列島の魅力を発信している。ワーケーションで訪れる企業の方々にも五島列島の現状を伝えている。

そこには五島列島が抱える人口減少に真正面から挑んでいる自治体、企業、住民の姿があった。ここは単なる宿泊施設ではない。人と人、人と地域、人と企業をつなぐ「場」として機能している。施設の価値は建物そのものではなく、そこから生まれる体験や交流によって高められることを実感した。施設の利用者に新たな発想や気付きをもたらし、地域には新しい関係人口を生み出す。そのような価値創造の仕組みを垣間見ることができた。

人口減少時代において、施設は単独で存在するのではなく、社会との関係性の中で価値を発揮することが求められる。五島列島でのこの体験は、これからのFMが目指すべき方向性を示しているように感じた。近年、働き方の多様化とともに「ワーケーション」という言葉に接する機会が増えた。しかし実際にその価値を体感するには、単に景色の良い場所で仕事をするだけでは物足りない。

五島列島の背景にある事実を知り、ワーケーションの本質とは何かを改めて考えさせられた。

「FM玉手箱」は、ファシリティマネジメントを実践するプロフェッショナルによるエッセイシリーズです。FMへの想いや知見を詰め込んだ“玉手箱”(=価値ある情報が詰まった箱)として、JFMAジャーナルオンラインでお届けしています。