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官民連携・広域連携による公共FM

官民連携・広域連携による公共FM

貝塚市総合政策部行財政管理課
参事兼公共施設マネジメント室長
認定ファシリティマネジャー

七野 司

しちの つかさ

はじめに

貝塚市は面積43.93km2、人口81,000人(2025年5月1日現在)で、大阪市の中心部から鉄道で約30分の距離にあり、白砂青松がまぶしい「二色の浜」や本州南限圏の天然記念物ブナ林を育む「和泉葛城山」など、豊かな自然に囲まれたまちです。 施策の展開にあたっては、「新たな時代に即した行政運営への転換」を図り、人口減少社会においても人口密度の維持による生活サービスの充実・確保を目指すとともに、近隣自治体との広域連携や、市民団体・企業との官民連携を積極的に進め、適切な役割分担により、市の負担を最小に抑え、最大の効果を発揮できるよう努めています。

貝塚市営住宅の有効活用による官民連携事業について

貝塚市は、木造、RC造等で構成される市営住宅計10団地を維持管理していましたが、旧耐震基準の木造住宅が地震により倒壊する可能性が高いことや南海トラフ地震の発生可能性を念頭に、早急な対策が必要であると考えていました。木造市営住宅は官民連携での建替えも検討していましたが、財源上の課題がありました。木造市営住宅の解体に当たり、既存の全入居者が転居可能な数の空き家が市内に存在することを把握できましたが、転居を実現するためには、安価で質の高い住宅の供給と、明け渡しに向けた入居者との交渉が課題でした。

 そこで、RC造市営住宅の改修と、民間住宅資産を活用した木造市営住宅の廃止と跡地活用を実施し、周辺地域を含むまちの再生を図るとともに、PFI手法の採用で、従来の手法よりも高質な公共サービスの提供、さらには財政負担軽減を事業の目標としました。

PFI法における特別目的会社(以下、SPC)は、市営住宅として借上げ可能な市内の民間住宅資産の斡旋および木造市営住宅入居者の転居支援を行い、木造市営住宅を解体・撤去のうえ、その跡地を定期借地権による賃貸や売却により活用します(図表1)。また、RC造市営住宅はRO方式(RehabilitateOperate)を採用したうえで改修し、維持管理を行います。

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図表1 民間住宅資産を活用した木造市営住宅の廃止と跡地活用スキーム図

民間賃貸住宅を公営住宅として借り上げる場合1棟借りが多く、空家賃の発生が懸念事項となりますが、本事業では、宅地建物取引業者が参加するSPCと協力して入居者のニーズに対応できる住宅を借りるため、空家賃が発生しないスキームを構築できました。

RC造市営住宅の改修、木造市営住宅入居者のRC造市営住宅および市が借り上げる民間賃貸住宅への転居、木造市営住宅の解体が連携して実施され、包括化の効果がありました。木造市営住宅の撤去によるコミュニティの分断が懸念されましたが、木造市営住宅7団地の跡地活用の提案も事業に含めることで、グループホームの誘致等、持続的なコミュニティ形成に資する跡地活用を実現できました。

地域インフラ群再生戦略マネジメントの取り組みについて

インフラについても老朽化が進むなか、どのように維持管理や更新をしていくか、貝塚市のみならず大阪府泉州地域の自治体における共通課題となっています。これらの課題解決に向けて、貝塚市が発起人となり泉州地域12自治体(岸和田市、泉大津市、貝塚市、泉佐野市、和泉市、高石市、泉南市、阪南市、忠岡町、熊取町、田尻町、岬町)および広域連携における自治体間の調整支援の大阪府とで、国土交通省に地域インフラ群再生戦略マネジメント(以下、群マネ)のモデル地域への申請を行い、2023年12月にモデル地域として選定されました。

群マネ参画自治体の調整支援として参画している大阪府は、府内に7カ所の土木事務所を有しており、泉州地域には鳳土木事務所(以下、鳳土木)と岸和田土木事務所(以下、岸和田土木)を設置しています。

12自治体という参画自治体が多い状況で、群マネ計画を策定するために重要となるのが合意形成です。円滑に合意形成を図るため、12自治体を鳳土木管内と岸和田土木管内の自治体に分け、かつ、それぞれの土木事務所の幹事を泉大津市、泉南市に担っていただくこととし、議論を進めていくスキームを構築し、この合意形成スキームの中で、議論を進めています。(図表2)

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図表2 泉州地域の群マネにおける合意形成スキーム

具体的には、まずは各自治体の道路、公園、下水道の業務の見える化を行いました。見える化を行うことで、例えばある業務について他の自治体が直営で行っているのか、民間企業に委託しているのか等がわかり、自分たちの業務の現状を客観的に見直すことができます。そのうえでさまざまな業務に関して、今後は群マネとして広域連携で行っていくのか、もしくは引き続き単独自治体で行っていくのか、また、官民連携で行っていくのか、自治体が直営で行っていくのか等を議論し、2025年12月の群マネ計画策定を目標に進めています。

今後の展開

2025年度は広域連携による成功体験を積み重ねていく必要があると考え、各自治体にとってメリットが享受しやすいモデル事業を設定し、実装を行っています(図表3)。公園・下水道分野においては、すでに予算化されている業務、道路分野においては、官民学連携による路面状況調査および研究を事業ターゲットに設定しました。特に道路のモデル事業は群マネ参画自治体すべてが実施することとなりました。

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図表3 025年度各分野モデル事業

そこで、2025年3月31日、泉州地域12自治体、三井住友海上火災保険株式会社、大阪大学大学院工学研究科およびパシフィックコンサルタンツ株式会社と「ドライブレコーダーを活用した維持管理の研究に関する協定」を締結しました(写真)。ドラレコの映像を収集し、AIによる画像分析により道路損傷データを抽出、そのデータを大阪大学大学院が分析し、「路面状態の劣化予測」「管理基準の設定」につなげることを目的としています。

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写真 協定締結の模様

さらに、泉州地域12自治体のインフラを管理するための組織化について、地方自治法上の一部事務組合等や官民合同会社の検討も開始しました。

将来の社会構造を見据えて、泉州地域で持続可能な公共施設・インフラ維持管理のあり方を検討し、全国の公共FMに貢献できるよう尽力する所存です。