
一般社団法人日本オフィス家具協会
専務理事
ぬきな えいいち
地球温暖化に対する社会の関心は年々高まっている。数年前にはSDGsという言葉を知る人も少なかったが、猛暑や異常気象が繰り返され、サステナビリティ(持続可能性)は身近な課題となった。そして、その解決策としてサーキュラーエコノミーが注目されてきた。一般社団法人日本オフィス家具協会(JOIFA)では社会のニーズに呼応して、これまで環境問題への対応を行ってきた。その代表的なものは、グリーン購入法や資源有効利用促進法への対応、使用済み家具の処理、カーボンフットプリントの算定などである。ここではその活動を振り返りながら、最近の話題を紹介する。
グリーン購入法は、正式名称は「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」として2000年に制定された。その目的は、持続可能な社会の構築であり、そのために国等の調達において環境負荷の低減に資する製品やサービスを優先的に利用することを推進している。この法律は国家機関には義務、地方公共団体に対しては努力義務、民間に対しては推奨で強制力はない。そのため実際の適用は、国家機関以外では政令指定都市などの大都市に留まっている。
対象となる製品やサービスは毎年見直しが行われていて、2025年1月現在では22分野288品目が対象となっている。グリーン購入法では、国等は適合製品の調達実績を品目ごとに取りまとめ、公表することが義務付けられている。そして、製品を提供する事業者にも環境情報の提供が求められる。
オフィス家具は当初から10品目が対象とされてきたが、2023年に「個室ブース」、「ディスプレイスタンド」が追加され12品目となった(図表1)。グリーン購入法への適合の判断基準は、素材を金属、プラスチック、木材などに区分けして、詳細かつ厳格に定められている。例えば、プラスチックでは再生材が重量比10%以上、木質材料では合法伐採された原木を使用する、というように細かく具体的に定められている。

最近付加された判断基準としては、「グリーンスチールの使用」、配慮事項として「製品のカーボンフットプリントの開示」、「カーボンオフセットされた製品」等がある。これらの新たな基準については、具体的な運用方法については現在協議中である。
オフィス家具のグリーン調達を推進するために、JOIFAでは、以下の3点を実施している。
オフィス家具の調達は、各社のカタログから選定することが多い。そこで、「JOIFAグリーンマーク」を定め、JOIFA会員企業がカタログ上で適合製品に表示することで、ユーザーが適合製品を容易に選定できるようにしている。

購入法の品目と適合基準は厳格に定められているが、解釈が難しい場合もある。そのため、家具メーカーが正しい判断が行えるように、用語や適合事例の解説をまとめて、「グリーン購入法の手引き」を作成している。この手引きは、グリーン購入法の改定に合わせて随時見直しを行っており、最新版はJOIFAのWebサイトで会員以外にも公開している。
グリーン購入法は、国や地方自治体を対象としており、民間での認知度は低い。そのため、民間企業への普及を目指して、JOIFAでは案内チラシを作成し、ユーザーへの周知に努めている。
以上のような活動により、グリーン購入法はオフィス家具業界では広く認知され運用されている。この制度では、適合の可否はメーカーが自主的に判断し公表することになっている。そのため、各メーカーは責任を持って運用し信頼を維持することが求められている。
カーボンフットプリント(CFP)は、製品の原材料調達、生産、流通・販売、使用・維持管理、廃棄・リサイクルまでのライフサイクルでの温室効果ガスの排出量をCO2排出量に換算したものである。CFPを把握、分析することで環境面での改善を定量的に把握することができる。また、近年はグリーン調達への対応などでユーザーから開示を求められるようになってきた。しかし、CFPの算定方法については解釈にある程度の幅があり、公平な算定のためには、製品別に算定ルールを定める必要がある。
オフィス家具のCFP算定ルールとして、JOIFAでは2024年に「製品別CFP算定ルール:オフィス家具」を策定し、一般に公開した。また、その内容を補足するためにJOIFA会員企業向けには「製品別CFP算定の手引き」を作成している。これらにより、オフィス家具のCFP算定は可能になった。しかし、各社によりプロセスや入手可能なデータの精度は同一ではないので、異なる企業の製品を単純に数値比較することは意味をなさない。CFPの目的は、同一企業での新旧製品の比較やプロセス改善の可視化であることを認識することが重要である。
使用済みとなったオフィス家具の廃棄は、本来はユーザーの責任であるが、廃棄物処理法による産業廃棄物としての処理は不慣れなユーザーには負担となっている。そのため、新規の家具の納入時にメーカーが古い家具を引き取る行為は「下取り」という商慣習として認められている。その際には、不法投棄を防ぎ、適正な処理によりリサイクルや廃棄を行うことが重要である。そのために、JOIFAでは「使用済みオフィス家具の適正な処理のためのガイドライン」を定めて、業界関係者に周知徹底している。
2001年に施行された「資源の有効な利用の促進に関する法律」(資源有効利用促進法)では、資源循環の指定品目として、金属製家具4品目が対象となった。それは、①事務用机、②回転イス、③収納家具、④棚である。これら指定4品目には、設計の段階からリデュース配慮設計・リサイクル配慮設計に努め、製品の省資源化・長寿命化、リサイクル推進に努力することが義務づけられている。同法施行から20年以上が経過し、国産メーカーの製品の多くでは、材質の表示や分解が容易な構造の配慮が実施されている。
これまで紹介してきたオフィス家具業界の取り組みは、それぞれが独立したものではなく、相互に関連性を持っている。近年は、それらを俯瞰して対応していく必要性が増しており、その視点がサーキュラーエコノミー(CE)であると考える。

図表3にJOIFAが考えるCEの模式図を示す。大きくは、生産フェイズと利用フェイズに分かれるが、サーキュラー全体を回していくためのボトルネックが随所に存在する。JOIFAではCE検討ワーキングを2023年から立ち上げて議論を進めている。そこでは、特に、使用済み家具の引き取りからリユース・リサイクルに移行するプロセスに課題があるということが認識されている。
販売されたオフィス家具製品のうち、当業界で下取りされているのは2〜3割程度で、その約3分の1はリユースされ、残りがリサイクル、廃棄となる。下取りされなかった家具の多くは、産業廃棄物として廃棄されているものと推定する。中には鉄スクラップとして資源化されるものもあるが、プラスチックや木材は大部分が埋立か焼却となっているであろう。これらの廃棄物を資源として再生できるどうかが、大きな課題となっている。
使用済み家具のリサイクルでの課題は、大きく3点に分類できる。それは、①技術的課題、②コスト課題、③法的課題である。
技術的課題は、使用済み家具を素材に分別して、再資源化するための、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルの方法である。特に、プラスチックは多種多様なものが使用されているため、分別、再資源化の難易度は高い。近年ではセンサーにAIを組み合わせて自動選別する技術も開発が進められている。
コスト課題としては、再生材の方が新規材料より高価格になってしまうことである。先に述べた通り、オフィス家具は資源有効利用促進法で分解容易な構造になっている。しかし、製品やメーカーによって分解方法が異なり、しかも分解するのが手作業ということで、実際の廃棄物処理の現場では有効に活用されていない。このように、設計上は分別が可能でも、コストが合わないために廃棄されているのが実情である。
法的課題は、廃棄物処理法との関連である。廃棄物処理法では、使用済み家具の回収は廃棄物処理の認可を受けた専門業者が行うことが原則である。家具メーカーがユーザーから直接引き取るのは、前述の「下取り」に該当する場合に限定される。したがって、業界として、下取り以外の使用済み家具の回収スキームを構築していく必要がある。
家具のリサイクルについては、オフィス家具だけでなく、家庭用家具や業務用家具でも大きな課題である。その対応の一例として、家具インテリアリサイクル&リニュー協議会(R&R協議会)の活動を紹介する。
R&R協議会には、木製家具とベッドの製造・販売企業が参加しており、家具の修理と使用済み家具のリサイクルを業界各社が共同で行う事業を試行している。その中から先行して、ベッド用マットレスの回収、再資源化を行うために、一般社団法人家具インテリアリサイクル協会(FIRA)が2024年に設立された。FIRAでは2025年に一般廃棄物の広域認定を取得し、引き続き産業廃棄物の認定も取得を進めている。(2025年11月現在申請中)このような活動が、家具業界全体に広がれば、製造、販売から回収、再資源化までが業界内で完結し、真の意味でのサーキュラーエコノミーが実現できる。
CEの将来を展望するには、海外の動きにも注目する必要がある。特に欧州(EU)では先進的な制度が次々と施行されている。EUで2024年に施行された「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)」は、製品の環境持続可能性を大幅に向上させることを目的としている。
ESPRでは、多くの工業製品を適用対象としている。そこでは、①多岐にわたるエコデザイン要件、②売れ残り製品の廃棄禁止、③デジタル製品パスポート(DPP)の導入が規定されている。
さらに2025年には、その導入を優先的に検討する製品グループとして、繊維製品、家具、タイヤ、マットレスの4品目が定められた。この中で、家具には2028年から適用が予定され、欧州の家具業界ではその対応策に追われている。
CEへの日本政府の動きとしては、経済産業省の資源循環経済小委員会が2025年に作成した「成長志向型の資源自律経済戦略の実現に向けた制度見直しに関する取りまとめ」で、多くの提言がされている。その中で、今後の制度的対応の方向性として、①再生材利用の拡大、②環境配慮設計の促進、③再資源化の促進、④CEコマースの促進が示されている。①〜③については、従来から進められてきたことであるが、CEコマースが新たな指針として追加された。
CEコマースに関する国の支援制度については、具体策の検討が進んでいるが、2025年5月に経済産業省が公表した「CEコマースビジネス推進のためのガイド」で、その目指すところが伺える。その骨子は、CEを促進するビジネスモデルを支援することで、CEの普及・浸透を図るということである。
サーキュラーエコノミーに関する動きは、世界中で加速している。特にEUの動きは日本政府にも大きく影響を与えている。オフィス家具は環境に与えるインパクトが大きいものであり、従来から家具業界は環境問題には取り組んできた。ただし、これまでの環境対応は、個別最適に進んできたので、ともすると目的を忘れがちであった。今後は、サーキュラーエコノミーという全体最適の視点での判断が必要である。そして、最終目的は地球環境の保全、温暖化への対応であって、サーキュラーエコノミーはその手段に過ぎないということを忘れてはならないと思う。