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成長戦略としての資源循環経済の確立に向けて

成長戦略としての資源循環経済の確立に向けて

経済産業省

GXグループ 資源循環経済課

1.サーキュラーエコノミー推進の背景

わが国は、1991年に制定した「再生資源の利用の促進に関する法律(リサイクル法)」を皮切りに、世界に先駆けて循環型社会への移行に取り組んできた。当時は最終処分場の逼迫や大量廃棄、不法投棄が深刻な社会課題であり、2001年に「資源の有効な利用の促進に関する法律(3R法)」を施行するなど、政府全体で「3R(リデュース、リユース、リサイクル)」を推進した。3R政策の総合的な推進により、国内の最終処分量は減少し、容器包装リサイクル法や家電リサイクル法などの個別リサイクル法の下でリサイクル率は大きく向上した。 

一方で、近年ではグローバルな経済社会の変化として、ロシア・ウクライナ危機等を背景とした資源制約・リスクの高まり、途上国での廃棄物問題、地球温暖化や海洋プラスチックごみ問題といった環境問題が顕在化している。こうした状況を踏まえ、廃棄物の適正処理にとどまらず、国内で資源を循環させる仕組みづくりが求められている。そのため、廃棄物になる前段階で資源を市場の中で循環させるべく、循環経済(サーキュラーエコノミー)の取り組みを進めている。

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図表1 資源循環経済政策の変遷(1R → 3R → CE)

2.日本におけるサーキュラーエコノミーの課題

日本がサーキュラーエコノミーを推進する上で直面している課題は、「資源制約」、「環境制約」、「経済成長との両立」の3つに整理できる。

第一に資源制約である。世界全体の資源需要が高まっている一方、資源供給が追いつかない状況が予見されており、加えて、一部の資源の供給が特定国に集中しているため、地政学的リスクが顕在化している。中国やインドネシアなどの国では、レアアースをはじめとする資源の輸出規制が始まっており、資源の囲い込みが進んでいる。それに対応するように、海外ではすでにサーキュラーエコノミーへの移行に向けた動きが加速化しており、例えば欧州では、欧州委員会主導による強制力のあるサーキュラーエコノミー関連規制が進んでいる。世界的な資源争奪戦に取り残されれば、調達コストの高騰や供給不安定化に直面することが予想されるため、国内での資源循環を強化し、再生材の安定供給体制を構築することが不可欠である。

第二に環境制約である。最終処分場の逼迫や廃棄物の越境移動への規制など、廃棄物処理の困難性が増していることに加え、海洋プラスチック問題や途上国での廃棄物不適正処理の問題が深刻化している。また、カーボンニュートラル実現の観点からは、化石資源の3割強がマテリアルの製造に利用されていることを踏まえ、二酸化炭素の排出が少ない再生材の利用促進が急務となっている。環境問題の解決に向けて、今後は3Rの徹底とともに、長期利用やモノのサービス化(Product as a Service)を通じて、廃棄物を減らし、二酸化炭素のさらなる排出削減を目指す必要がある。再生材の利活用や環境に配慮した製品設計を重視しつつ、資源循環を前提としたビジネスモデルへの変革が重要である。

第三に経済成長との両立である。資源を国内で循環させずに輸入に依存すれば、国富の流出や国内物価上昇のリスクが増大しかねない。欧州では一定比率の再生材利用を求める市場創造型の規制の導入が進み、グローバル企業もブランド価値向上の観点から再生材利用を加速している。世界の環境変化に迅速に対応できなければ、国際市場やサプライチェーンから取り残され、再生材調達や廃棄物処理も海外依存になる可能性がある。

3.サーキュラーエコノミーの実現に向けた経済産業省の取り組み

これらの課題に対応するため、経済産業省では、成長志向型の資源自律経済の確立を目指し、資源有効利用促進法の改正を含む「ルール・制度の整備」、「産官学の連携」、および「投資支援」を三位一体で推し進めている。

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図表2  サーキュラーエコノミー推進に向けた取り組み

 「ルール・制度の整備」では、資源循環経済小委員会において、動静脈連携の加速に向けた制度整備に関する議論を2023年秋より実施し、2025年2月に制度見直しに関する取りまとめを行った。この取りまとめ内容を踏まえて、再生材の利用拡大や環境配慮設計の可視化・価値化等を促進していくため、第217回通常国会に「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律及び資源の有効な利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」を提出し、2025年5月28日に成立した。改正法の主な改正事項は①再生資源の利用計画策定・定期報告、②環境配慮設計の促進、③GXに必要な原材料等の再資源化の促進、④CE(サーキュラーエコノミー)コマースの推進である。

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図表3 資源有効利用促進法(資源法)改正のポイント

①再生資源の利用計画策定・定期報告については、脱炭素化を促進するために利用することが特に必要な再生資源(脱炭素化再生資源)を原材料として利用することが特に必要な製品(指定脱炭素化再生資源利用促進製品)を指定し、当該製品の生産量又は販売量が一定以上の製造事業者等に対して、計画の作成及び定期報告を求める。これにより、再生資源の利用をモニタリングする仕組みを構築し、必要に応じて再生資源利用の改善を促していくことで、再生資源の利用拡大を促していく。具体的には、脱炭素化再生資源として再生プラスチック、指定脱炭素化再生資源利用促進製品として自動車、家電4品目、容器包装(食品(飲料PET ボトル除く)や医薬品を除く)を指定する予定である。

②環境配慮設計の促進については、ライフサイクル全体を見据えた環境配慮設計が特に優れた製品設計の認定制度を創設することで、環境配慮設計の全体レベルの底上げを図る。認定製品については、国による公表と周知、グリーン購入法における国の調達の基本方針における配慮等を行う。

③GX に必要な原材料等の再資源化の促進については、現制度ではリチウム蓄電池やその使用製品のメーカー等に、リチウム蓄電池の回収・再資源化を求めているが、回収率が依然として低い。その理由として、回収再資源化の実施状況をモニタリングする仕組みとなっていない点や、広域回収には個別の自治体の許可が必要で回収スキームが構築しにくい点、小型リチウム蓄電池を取り外せない一体型製品が増加している点などが挙げられる。さらに近年、リサイクル・廃棄物処理の現場で小型リチウム蓄電池起因の発火事故が増加しており、社会問題となっている。こうした背景から、メーカー等による回収率の向上を促進するために、高い回収目標等を掲げ、認定を受けたメーカー等に廃棄物処理法の特例(適正処理の遵守を前提として業許可不要)を講じる。さらに、自主回収・再資源化の対象製品として、発火リスクの観点から、リチウム蓄電池と一体型製品である電源装置、携帯電話用装置、加熱式たばこデバイスを新たに追加指定し、その回収率向上を図る予定である。

④CEコマースの推進については、シェアリングやサブスクリプション、リユース等のCEコマースの健全な発展と活性化を目的に、CEコマース事業者の類型を新たに位置づけ、資源の有効活用や消費者の安全といった観点から満たすべきCEコマースビジネスの基準を設定する。

「産官学の連携」では、サーキュラーエコノミーへの非連続なトランジションの実現に当たっては、個社ごとの取り組みだけでは経済合理性を確保できないことから、関係主体の連携による協調領域の拡張が必須である。持続的かつ継続的な活動のためには、ビジネスとしての経済合理性と、回収・リサイクルの段階における地域の協力などが不可欠であることから、経済産業省・環境省では、経済団体、企業、自治体、大学等が参加するサーキュラーパートナーズ(略称:CPs)を立ち上げ、2025年9月末時点で、約750者の参画を得ている。CPsでは、わが国におけるサーキュラーエコノミーの実現に必要となる施策について検討を進めており、具体的には、2030年、2050年を見据えた日本全体や製品・素材ごとのビジョンや中長期ロードマップ、サーキュラーエコノミー情報流通プラットフォームの構築、地域の特性などを踏まえた地域循環モデルの検討を行っている。さらに、国際標準化・国際連携についても今年度検討の枠組みを新たに立ち上げ、サーキュラーエコノミーの国際的なルール形成にも取り組む。

「投資支援」については、2023 年 12 月に公表した GX実現に向けた投資促進策を具体化する 「分野別投資戦略」において、資源循環分野では 10年間で官民あわせて2兆円超の規模の投資の実現を目指すこととしている。GX経済移行債を活用し、再生材利用や長寿命化、再資源化の容易性確保につながる「環境配慮型ものづくり」や、CEコマースビジネス発展のための技術開発、実証及び商用化に係る設備投資支援を行っており、CPs を活用し 2025 年度からの3年間で100億円の支援を実施している。

4.最後に

近年では、世界的な資源需要と地政学的なリスクの高まりによる資源制約、廃棄物問題や気候変動問題等の環境制約、そして経済成長の観点から、サーキュラーエコノミーへの移行が喫緊の課題となってきている。わが国においても、これまで主に廃棄物処理や3Rの観点で進めてきた資源循環を経済活動として進めていく意義が一層高まっている。

サーキュラーエコノミーの実現に向けては、他社・他産業との連携が不可欠であり、産官学が有機的に連携することが重要である。資源循環の観点から、設計・製造段階、販売・利用段階、回収・リサイクルといったライフサイクル全体を見直すことで、新たなビジネスチャンスが生まれ、日本が国際的な競争力を獲得することを期待している。経済産業省では、関係主体の協力を得ながら、引き続き資源循環経済政策を促進していく。