ドナルド・マクドナルド・ハウスは、子どもの治療に付き添う家族のための滞在施設。「わが家のようにくつろげる第二の家」として、日常生活がスムーズにおくれるように、自炊ができるキッチンやリビング、ダイニング、ランドリーやプレイルームを完備し、プライバシーを守れるように配慮したベットルームも用意されている。家族の負担を考え、1人1日1,000円ほどで利用できる。最初のドナルド・マクドナルド・ハウスは1974年、米国フィラデルフィアで開設された。以来、45の国と地域に377カ所開設されている。日本では、2001年にせたがやハウスが開設され、現在は国内に12カ所ある。公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパンが施設を建設し、ボランティアによって運営されている。
国立成育医療研究センターに隣接するドナルド・マクドナルド・ハウスせたがや(せたがやハウス)は、今年で22年目を迎えた。小児医療の基幹病院である国立成育医療研究センターには、日本全国、さらには海外からも患者がやってくる。ハウスマネジャーの大野一美さんは「病院は病気の治療をしますが、私たちは患者さんと家族を間接的にサポートしています」という。
運営の費用は企業や個人からの寄付で賄われており、利用する家族への対応、日々のハウスキーピングやメンテナンスはすべてボランティアが担っている。せたがやハウスでは、現在、152人のボランティアが登録しており、午前、午後、夕方、夜のシフトで24時間、365日稼働を続けている。コロナ禍も感染予防対策をしながら運営を止めることなく家族を支えてきた。
22年の活動の中で、設立当社からボランティアを続けている人もいる。また、かつて入院していた子どもが大人になり、寄付やボランティアとして支援する側にまわるという循環も生まれている。最近では、医学や看護を学ぶ学生を中心に大学生ボランティアが増えているという。
大野さんは「私達からボランティアの方にこうしてくださいと細かなお願いをすることはありません。今日はご両親と何歳ぐらいのお子さんがどこから来ますよとお伝えすると、ご家族のことを考えて、お部屋を整えてくださいます」。ベッドの上に掛けてあるパッチワークキルトは、せたがやハウスキルトの会が、一針一針縫ったもの。愛らしいドアストッパーやバスマットからも手づくりの温もりが感じられ、やさしさに包まれ、心が整えられる。
掃除機をかけるのが得意な人、隅の汚れを見逃さない人、掃除機を分解してメンテナンスする人、リネンを洗う人、ふんわりたたむ人、寄付された食品を分類し収納する人、棚をつくる人…。ボランティアの人たちはそれぞれ自分の得意を生かしハウスの運営にあたる。「ボランティア募集の相談会では、特技やスキルがないと心配される方がいますが、ご家族のために活動したいなという思いだけを持ってきてくださいとお話しています。あとはここで、できることをしていただければいいのです。一人ひとりの小さなことをいっぱい集めて、このハウスをつくり上げているイメージです」。
コロナ禍になりWi-Fi環境を整備した。これまで、平日は母親の利用が多かったが、リモートワークができるようになり、父親あるいは両親で利用するケースも増えてきたという。
コロナ禍でここ3年ほどボランティア説明会ができなかったが、ホームページから問い合わせをしてくる人もいるという。7月からはボランティア説明会を再開する予定だ。また築20年以上が経過したハウスは設備を中心に大規模修繕が必要な時期に来ており、今後、どのようにしていくかを考えていく必要もあるという。
「私たちスタッフもボランティアさんもご家族のためにという思いでハウスを運営しています。それは22年間ずっと変わりません。私の使命は、それを次につないでいくことです」。


この記事は、利用する人や命あるものに大切な日常を提供するさまざまなファシリティを紹介し、それらの役割やマネジメントに携わる人の思いや課題をお伝えした「つなぐFM」に掲載したものです。(2023年JFMA JOURNAL NO.211)
現在、大規模改修を計画されているとのこと。次につなげる新たなハウスを、是非取材したいと考えています。