第20回(2026)

功績賞

  • 公共
  • まちづくり

公共施設マネジメントにおける合意形成に関する研究 (博士論文)

七 野 司 (大阪府貝塚市)

公共施設マネジメントにおける合意形成に関する研究 (博士論文)

研究の背景と目的

これからの自治体は、限られた財源の中で、多様化する市民ニーズや行政課題に対応し、行政サービスを低下させることなく提供し続けていくため、公共施設マネジメントが必要であると考えられる。そして、着実に公共施設マネジメントを進めるためには、様々なステークホルダーと合意形成を図ることが肝要と考えられる。

本研究では、公共施設マネジメントに関して官民連携の手法を導入するプロセスにおける合意形成に必要な条件の明示、既存の合意形成手法に基づく新たな合意形成手法の提案とその妥当性の検討を行う。そしてそれらの結果をもとに、公共施設マネジメントにおける合意形成に関して提言を行うことを目的とする。

研究の成果

①指定管理者制度による図書館サービスの提供に着目し、実際に指定管理者制度を導入した多賀城図書館、海老名図書館、高梁図書館の3事例と導入に至ることのできなかった小牧図書館の事例を合わせた計4 事例を対象に、合意形成プロセスにおけるステークホルダーの関わりについて比較検証を行うことで、合意形成プロセスにおいて経ておくべき具体的な段階と必要な条件を示した。

②我が国の官民連携による公共施設マネジメントにおける合意形成手法を開発するため、米国で生まれたコンセンサス・ビルディング(CB)手法をもとに「官民連携コンセンサス・ビルディング(PPPCB)手法」を提案し、その妥当性の検証に向けた第一段階として、官民連携の手法により公共サービスを提供している千代田図書館と指宿市道の駅の2 事例に加え、官民連携手法の導入に至らなかった小牧図書館の3 事例からその妥当性を検討し、その有効性を示した。

③上記の研究の成果を踏まえて、広域連携による公共施設マネジメントを実施するための合意形成プラットフォームを図の通り提言した。この合意形成プラットフォームが課題解決のスキームとして機能するよう、すべてのステークホルダーがその役割を理解し、貢献するという共通認識を持つことが重要である。

筆者は、地方自治体で建築技術職の職員として公共施設マネジメントの部署に奉職し、担当業務として公共施設等総合管理計画の推進、広域連携による官民連携の事業化を行っている。日々の業務における合意形成に関する問題意識から本研究を進めてきた。公共施設マネジメントにおける合意形成に関して、学術的な貢献と現場での実践による貢献を成し得ることが筆者のライフワークである。

●講評
本功績は、公共施設マネジメントにおける最大の課題の一つである「合意形成」を、数多くの事例調査と分析から理論的に整理・体系化し、FM分野の博士論文として提示した点にある。実務経験に根差した課題意識と、学術的検証を丁寧に重ねた研究姿勢により、自治体職員や関係者にとって示唆に富む枠組みを提示している。公共FM は制度・財政・住民意識が複雑に絡み合う領域であるが、本研究はその意思決定プロセスの構造を可視化し、今後の実務改善につながる理論的基盤を与えるものといえる。講演や啓発活動を通じて知見の社会還元にも積極的に取り組んでおり、実務と学術を架橋する取り組みとして、今後の展開に大いに期待したい。