第20回(2026)

優秀FM賞

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Workcation House U― 既存公共施設を活用した 継続的ファシリティマネジメントの実践 ―

株式会社文祥堂

Workcation House U― 既存公共施設を活用した 継続的ファシリティマネジメントの実践 ―

はじめに

Workcation House U(以下、U)は、小田原市根府川にある築70年余の公共施設を利活用した施設である。かつて小田原市の片浦支所として使用されてきた木造2 階建ての建物は、2019年にその役目を終え、2022年6月に用途転換したU としての運営を開始した。仕事や滞在、交流の場として、それぞれの時間を過ごし集う場所となっている。

既存施設を前提とした活用方針

この施設の利活用にあたり重視したのは、きれいに作り変えることではなく、経年変化の佇まいの魅力と建物の長寿命化を両立することである。本施設は小田原市から建物を購入し、土地については10年間の事業用定期借地契約を締結し、自社で運営している。長期修繕計画ありきで保守するのではなく、建物設備の現況をふまえた機能維持を図る方針のもと、開業前には構造補強や必要な設備整備を行ったが、旧公共施設であったことから設備面では想定以
上に手を入れる必要があった。

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Workcation House U 開設の背景と概要

運用を起点とした維持管理

Uは、現地スタッフが対応する時間帯と無人運営の時間帯を組み合わせた運用とし、施設の特性に応じた維持管理体制を構築している。現地での気づきは、日々写真とともに記録し、関係者間で共有したうえで、手を入れる箇所を段階的に判断し、継続的に状況を確認するとともに、軽微な修繕を行っている。築年数を重ねた木造建築では、机上の計画よりも経年変化の進捗に応じた予防保全や修繕を行うことが必要であり、こうした対応の積み重ねが、建物を使い続けるための無理のない運営につながっている。

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1階コワーキングエリア(日常利用)

利用実態の変化と場の機能

運営開始後、「働く場」という枠に収まらない使われ方が日常の中で見られるようになっている。平日は各自のペースで仕事をし、合間にテラスで海を眺めたり近隣を散策したりする姿がある。週末には地域の人々が集まり、それぞれの時間を過ごしている。

会員同士やスタッフ、地域住民との日常的な会話の中から、小さな企画や自主的な活動も生まれてきた。会員主催の交流会など、利用者自身による新たな使われ方も生まれている。施設は単なる作業空間ではなく、人と人との主体的な関わりの中で活用され、コミュニティを醸成する場となっている。

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1階コワーキングラウンジ(ローカルマーケット)
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地元農園の方のウェディング利用

利用者・地域と連携した維持

Uの施設の安全や維持は、運営者だけで担っているものではない。利用者や地域住民との日常的なやりとりの中で、気づいたことが共有され、必要な対応として運用に反映されている。Uで重ねてきた判断や工夫は特別なものではなく、日頃の働く場づくりにおいて大切にしてきた考え方に加え、街の一部となり施設を育てていく持続性を重視し、実践してきたものである。空間構築だけで終わらせず、運用を通じて改善を重ねる姿勢は、この施設の運営にも活かされている。

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2階コワーキングラウンジ(自社セミナー)

成果と今後の展開

今回の受賞は、特別な手法や大規模な投資によるものではなく、限られた条件の中で、日常的な運用を通じて丁寧に改善を積み重ねてきた点が評価されたものと受け止めている。Uでの経験を通じて得られた知見を、今後は他の施設や既存資産の運用にも活かしていく予定である。

●サービス提供者
・株式会社空間編集舎
・サキアンデザイン
・建築創作研究所
・株式会社せりざわたけし工務店
・有限会社生井興業
・株式会社サノ工芸社
・株式会社木下商会
・株式会社fixU
・株式会社Photosynth

●講評
「Workcation House U」は、小田原市の民間提案制度により築約70年の旧支所を再生した地域共創型ワーケーション施設である。都心から1時間強を要するアクセスという条件下で、無人運営と有人対応を組み合わせた低コスト運営、会員制・婚礼・宿泊などの事業多角化により黒字化を達成した。都市部ワーカーと地域住民の交流拠点として機能し、クオリティの高い環境の提供を行っていること、持続可能なFM体制を確立している点などを高く評価するものである。遊休公共施設の持続的利活用モデルとして、他の地域への展開も期待される優れた先進事例である。