第19回(2025)
特別賞
清水建設株式会社
本件は清水建設北陸支店の社屋建替え計画における活動である。旧社屋は、当初は旧本館のみであったが、業務の拡大に伴い手狭となって別館を増築し、本館と別館は渡り廊下1か所で繋げて運用していた。本館と別館に社員が分散していたことで、業務上の効率の悪さが目立っていたため、新社屋では旧社屋における業務効率の改善を活動目標とした。さらに、持続可能な未来づくりへの貢献やSDGs の達成を目指すために、以下をFM の具体的なポイントとして掲げた。
1) 働き方改革によるコミュニケーションの活性化
2) 社員の健康配慮を目指した執務環境の改善
3) 社会的背景を考慮し高い環境性能を実現

新社屋では、コミュニケーションを活性化して業務効率を向上するために、間仕切り壁のないワンフロアに全部署を集約するワンプレートオフィスとした。様々な働き方に対応できるスペースを各所に配置するとともに、働く環境を自由に選択できるABW(Activity Based Working)やグループアドレスを採用することで、仲間との一体感や安心感の醸成を図りながら多様なワークスタイルの実現を目指した。
ワンプレートオフィスでは、みんなの顔が見えるために心理的安全性が確保しながら、ABW により従業員個人が働き方を選択することが可能となった。さらに、従業員の健康配慮を目的として、多くの緑の配置、エルゴノミクスに配慮した上下昇降デスクの導入、サーカディアンリズムを光環境の面で維持・サポートするサーカディアン照明制御の導入などにより、ウェルビーイングを高めている。この他、能登ヒバを使用した木質建築化を行い、木の香りによるリラックス効果やCO2 の固定化の効果を得ている。


カーボンニュートラルの実現を見据えたZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)建築を実現するために、金沢の伝統の継承と街並みとの調和を重視しながら、この地で得られる自然エネルギーを積極的に活用する環境配慮型オフィスを目指した。また、ZEB 建築を目指すうえで、再生可能エネルギー設備の併設が必要となるが、新社屋で実装した太陽光発電設備では休日や中間期等の建物電気需要の少ない時間帯・時期に太陽光発電電力を建物で消費し切れず大量の余剰電力の発生が予想された。さらに、日本全国で多発している気象災害に対応する強靱な建物を目指すためにも、再エネの地産地消を行うエネルギー自立型建築物を目指す必要があった。新社屋では、この課題の解決を目指して、太陽光発電電力の余剰電力を用いて水を電気分解し、グリーン水素に置換して蓄エネする「CO2 フリー水素利用システム:Hydro Q-BiC Ⓡ」を実装している。
建設業界における水素活用技術の先駆けとして日本で初めて建物内実装し、運用実績を社会に発信しながら、建設業界における水素社会の促進を図っている。


●サービス提供者
・金沢工業大学名誉教授 垂水弘夫
・早稲田大学教授 田辺新一
・千葉工業大学教授 望月悦子
●講評
同社の北陸支店の新社屋プロジェクトに関する応募である。築40 年の旧社屋建替えに際し、社会的課題を含めた解決策を求めた。運用開始は2021 年で、約3 年が経過している。多様な働き方とコミュニケーション向上をめざすワンフロアのワークプレイス、ユーザーのウェルビーイングへの配慮、環境配慮型施設の3 つを特徴とする。とくに、環境配慮への施策で、ZEB の一環として水素利用システムを建物に実装している。これは、太陽光発電の余剰電力を水電気分解に利用し、生成される水素を貯蔵し、燃料電池に活用するもの。計画、働き方改革などに本社スタッフが関わっており、同社のショーケースとしての投資という面が強いが、名古屋支店の改革につながるなど社内への好影響もある。