第19回(2025)
功績賞
一般社団法人建設プロジェクト運営方式協議会
日本の建築産業は、技術者・技能者不足、プロジェクトの複雑化など、様々な問題を抱える中で、良質な施設資産を建設し、維持し続けることが求められています。そのためには、従来の競争入札や総価請負契約への偏重から脱却して、プロジェクトを柔軟に運営できる知識を身につける必要があります。
本書は、発注者の役割、コストマネジメント、プロジェクトに内在するリスク、透明化の意義、海外の事例などを交え、発注者、運営者、設計者、コンサルタント、施工者など多様な主体者が共通の知識でコラボレーションするための教科書を目指し、契約方式、選定方法、支払い方式の多様な組み合わせを戦略的に選択するための材料を提供することに努めました。
企業経営を続ける中では、新しい施設の建設、増築、改修、修繕、解体など、保有する施設資産に手を加えるたびに、大なり小なりプロジェクトが立ち上がります。それらを首尾よくこなすことで企業経営に貢献することがファシリティマネジャーに求められますが、建築生産の知識や経験を持つ技術者が施設管理部門に所属しているとは限りません。
本書には、産学官の枠組みで実施した建築プロジェクト発注契約方式の多様化に対する実務者の意識の整理を試みたワークショップ、ヒアリング、実務者とのディスカッションなど、実態調査の成果をふんだんに盛り込むことにより、事例のケーススタディにとどまらず、近年の建築プロジェクトに潜在する課題を一般化して体系的に整理することを試みました。
また、本書の根底に流れている思想は、発注者による建築プロジェクトの主導とコラボレーションです。発注者の視点で建築生産の流れを捉えたことも、本書がファシリティマネジメントの発展に貢献できるところだと考えます。
本書は3 部構成となっています。
第1部は、建築プロジェクト・マネジメントの現在の姿を、発注者や受注者の責務、コストの計画とマネジメント、リスクと契約のあり方、英国と米国における発注契約方式の変化などの視点で議論を展開しています。
第2部は、発注契約方式研究の成果を主体に構成しています。多様な発注契約方式に対する実務者の声を聞き、発注者、設計者、施工者の見解の違いや各者が感じているメリットやデメリットを詳細に記述しています。
第3部は、これからの建築プロジェクト・マネジメントにおける課題提起と、多様な発注契約方式の事例紹介です。日本の建築産業がさらなる発展を遂げるためには、プロジェクトオーナーである発注者自身がプロジェクトマネジャーであるという思考に変えていかなければなりません。これからの発注者に向けていくつかの提言を述べています。
●講評
わが国の建設プロジェクトは、多様な問題があり、それらが複雑に絡み合っている。FM を推進する立場でいえば、発注者側であるFM 担当者の入念な要件整理(ブリーフィング)と建設プロセスを適切に選択・支援する外部コンサルタントとの協業により、実現したいものを明確化し、実現プロセスを適切にマネジメントすることが重要である。本応募は、現代の建設プロジェクトにおける諸問題を、多様な参加プレイヤーへのヒアリングなどを通じて解明しようと努めているもの。発注者側の課題解明だけでなく、多様で複雑な問題について課題を明確化している。現状の諸問題を多様なプレイヤーの多面的な視点から考察するうえでは、大いに参考となる。