第18回(2024)
優秀FM賞
東京都墨田区
墨田区では、2013 年5 月の「墨田区公共施設白書」(以下「白書」という)策定を契機に、2014 年7 月に「墨田区公共施設マネジメント実行計画」(以下「実行計画」という)を策定し、公共施設(建物)の維持管理や運営方法の見直し、民間活力の活用、長寿命化の推進、統廃合等を進めています。
第3 次実行計画(2022 年3 月策定)現在、延べ面積の合計で約52 万㎡(約300 施設)の公共施設を有しており、そのうち約61%が築30 年以上であり、老朽化が進んでいます。
2006 年に「墨田区公共施設計画的保全システム」(以下「保全システム」という)を導入しています。この保全システムのデータをもとに、FM 推進の基礎資料として、2013 年に白書を作成し、2014 年には、個別施設計画となる第1 次実行計画を策定するなど、他の自治体に先駆けて公共施設マネジメントの取り組みを開始しました。現在、個別施設計画となる実行計画は、「第3 次」まで進んでおり、さらなるFM の推進を図っています。
この間、FM を推進していくための組織も変化しています。2015 年に、保全システムとともに技術系職員を企画・行革部門へ移管し、翌2016 年には、行革部門に公共施設マネジメントを専管する副参事が配置され、さらに、2018 年には、課レベルの組織が設置されました。
さらに2021 年、公共施設マネジメントと財産管理を組み合わせたFM 専管組織が誕生し、ついに2023 年、営繕業務を併せた部レベルの組織がスタートしました。行財政改革の一環としてスタートしたFM の取組みが、現在は、資産管理・資産経営へと変化しています。

第3 次実行計画では、以下の5 つの基本方針を掲げています。
(基本方針1) 維持管理費の適正化
(基本方針2) 民間活力等の活用
(基本方針3) 計画的な予防保全による施設の長寿命化の推進
(基本方針4) 施設保有総量の圧縮
(基本方針5) 新たな⾏政需要に対応するための施設再編
特に「基本方針3」については、墨田区ならではの取り組みとなっています。

2015 年に公共施設保全指針を定め、目標使用年数を60年に設定したほか、将来の財政負担を考え、築年数に応じて計画修繕費を段階的に抑制する条件付保全計画などの考え方を導入し、それらを踏まえた「公共施設(建物)長期修繕計画(以下「長期修繕計画」という)を、2016 年に策定しました。
長期修繕計画対象案件について、修繕工事を実施する年度から起算して2 年度前から、工事条件整理を実施し、その結果を踏まえて、翌年度(修繕工事の前年度)に、まとめて設計委託を行っています。
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取り組み当初の主たる目的は、前述のとおり行財政改革であり、耐震性能が基準値以下の施設の廃止を中心に取組みました。
これからのFM は、効率的かつ効果的な行財政運営とともに、新しい政策実現の基盤として「公共施設」におけるサービス向上も実現する「架け橋」としての役割を担っていくことが重要であると考えています。



●サービス提供者
・株式会社日積サーベイ
・株式会社日本設計
・明豊ファシリティワークス株式会社
・株式会社山下テクノス
●講評
東京都墨田区の公共FM 活動の応募である。同区のFM への取り組みは、2006 年に始まり、施設データベース整備と保全システムの導入を行った。そして、2013 年度~2015 年度では公共施設白書を策定し、公共施設等総合管理計画策定(2015 年)へと発展させている。さらに2016 年度~2020 年度では、個別計画へと進めて第2 次公共施設マネジメント実行計画を策定した。2021 年度では第3 次公共施設マネジメント実行計画を策定するとともに、2023 年には営繕部門と統合してファシリティマネジメント担当部を創設し、体制の整備も行っている。建物の保全については、施設データベース、長期修繕計画をもとに計画的保全へと発展させ、与条件整理、設計、修繕工事へとサイクルを回す体制が整備された。また、公共施設等総合管理計画に基づき施設面積の15%削減の方針に沿って、現状では5.3 万㎡の削減を達成している。さらに、旧中小企業センターの大規模改修による千葉大学墨田サテライトキャンパス誘致や旧すみだ健康ハウスの刷新、施設複合化による保健施設の新築など、多様なFM の施策が実行されている。歴史的には向島と本所の2 エリアに分かれていた故の公共施設の重複や、敷地・建物規模が小型という地域特性の克服、残存不具合を含めた計画的修繕の企画など、今後の課題も残されているが、17 年間にわたり公共FM を段階的に進めてきた担当者の地道な活動は評価に値する。引き続き、公共施設の再配置など、総合的なFM 戦略の策定と実行により、さらなる発展を期待したい。