第18回(2024)
優秀FM賞
西日本電信電話株式会社
NTT 西日本グループは西日本エリア各地に建物ストックを保有しており、それらの有効活用が課題となっている。また、昨今のカーボンニュートラルへの対応、新たな成長ビジネスへの事業変革の対応といったファシリティ要求水準の変化や新事業へのファシリティ供給戦略などが求められており、グループ全体を俯瞰したファシリティマネジメント(以下、FM という)戦略の策定が必要不可欠であった。
これらの課題解決に向け、①通信設備の安全②社員の働きやすい環境③アセットの有効活用の3 つの柱を中心としたFM 戦略を立案し取り組んでいる。

FM 戦略実践の一つとして、2018 年より新本社建設・移転プロジェクトを進めてきた。単なる旧本社ビルの老朽化解消・移転に終始することなく、地域通信事業会社としての使命、ソーシャルICT パイオニアとしてのさらなる社会貢献を達成するため、次の観点でプロジェクトに取り組み、新たなFM へチャレンジし続けている。
(1) 多様な働き方の実現 -10 の働き方-
社員アンケート、若手ワークショップメンバーとのディスカッションを通じて《NTT-W’s ×10 の働き方》を策定。リモートワークを基本とする新しいスタイルを前提として、業務に合わせて自由に働く環境を選択できるABW を実現するオフィスプランニングとした。
基準階フロアは組織内アクティビティの活性を促進する「チームスペース」と組織を超えた交流を促進する「クリエイティブスペース」で構成され、また、約1,800㎡の1 フロアを可能な限り開放的でオープンな空間とすることで組織変更や人数変更にも柔軟に対応できるオフィスとしている。
(2) 働き方をアップデートし続ける仕組みの構築
今後も加速していく社会情勢や事業変化に柔軟に対応し、常に働き方・ワークプレイスをアップデートし続けるため、専属のファシリティマネジャーを配置した「i-CAMPUSFM センタ」を設立。入居者要望に対する施策検討・実施支援といった日常的なオフィス運営に加え、社員アンケートやヒアリングをもとにオフィス事業計画の策定・実施といった継続的なワークスタイルサポート、新たな経営スタイルの変革やESG の取り組み等の経営戦略を反映した社員の働き方改革推進などをミッションに活動している。

(3) 事業創出への取り組み
企業・スタートアップ・自治体・大学などが自由に交流し、それぞれの思いやアセットを共有しながら共創を進め、実社会での活用をめざすオープンイノベーション施設「QUINTBRIDGE(クイントブリッジ)」をi-CAMPUS 敷地内に開設。2024 年1 月時点で、開業1 年10 カ月で法人会員は1,200 組織、個人会員は1.7 万人に登録していただき、年間約400 回のイベントを開催、平均で1日約350 名の来場と、多くの方に利用いただいている。
(4) データドリブンなFM 実践によるSDGs への貢献
データドリブンを活用したSDGs への取り組みも積極的に行っており、その一つとしてフードロスに取り組んできた。Work From An ywhere(働く場所が柔軟に選択できる働き方)を導入することで日々の出社人数が大きく変動するが、入退館システムのゲート通過ログから出社人数情報を取得し昼食時の喫食数を予測し、仕込み量をコントロールすることで3.2t/ 年相当のフードロス削減を実現している。

●サービス提供者
株式会社NTT ファシリティーズ
●講評
同社は、2008 年と2014 年、過去2 回の応募・受賞がある。今回は、2022 年1 月移転の新本社ビルのプロジェクトを通じた新たなFM 戦略の内容と実践に関する応募である。具体的には①本社機能の拠点集約化、②旧本社ビル跡地の活用による市街地環境の再整備と大阪城周辺エリア発展への貢献、③新本社エリアに共創施設(QUINTBRIDGE)を併設し、ビジネスの創出・開発・社会実装までが可能なエコシステムを形成、④コロナ禍後を見据えたニュノーマルなワークプレイス構築と働き方改革、社員のWell being 向上、⑤オフィスFM 推進チーム組成によるFM 継続とSDGs への貢献、を掲げている。FM に関しては、①の本社拠点集約化と④の働き方改革と連動した新しいセンターオフィスのワークプレイス改革、③の新ビジネス創造の拠点構築と運営が中心である。拠点集約により2.6 億円/年のキャッシュアウト削減などファシリティコストの削減を実現している。働き方改革との連動では、チェンジマネジメント実践、FM センター設置、定量的な評価など総合的な施策を進めている。共創施設は他のイノベーションセンター施設と比べて、現時点で高く活用され、継続性も感じられた。同社の新ビジネス創成への強い意欲に裏付けされている。一方、本社のワークプレイスは働き方改革の途上にあり、働く場としての活用については課題が残されているが、総じて包括的な経営改革と連動して、本社オフィスの再配置、働き方改革と連動する新たなワークプレイス供給と運営など、総合的なFM の経営活動としての実践であると評価できる。