第17回(2023)
特別賞
大和ハウス工業株式会社
大和ハウスグループは創業者石橋信夫の言葉「世の中の役に立つことを事業にする」を念頭に事業展開し、創業100 周年の2055 年に売上高10 兆円を目標にしています。これを実現するための企業経営の根幹は「人財」育成と考え、経営方針にも人的資本の価値向上を掲げています。
VUCA(ブーカ)の時代、本質を探究し、未来を描く想像力を養える人財育成が必要と考え、そのための新たな研修施設「みらい価値共創センター コトクリエ」を建設しました。
本施設は創業者精神の継承と地域への愛着や社会貢献への想いをいだき、共にみらいへ歩む人財を育む大和ハウスグループ約50,000 人の人財育成拠点です。
2015 年からスタートしたプロジェクトはワークショップを重ね、「研修の場」のあり方を改めて討議し、リモートワークの時代だからこそ、リアルでの共創が人を育てる、共育であるという共通認識を得ました。
これまでの研修は座学が中心であり、講義室が並ぶだけの空間でしたが、これからは共に気づき、学び、共感する環境が必要であると考えました。閉鎖型個室の連続ではなく、セミオープンな場の集合体を組成することで、多様な人と巡りあえることを意識し、昨今オフィスづくりの主流となりつつあるABW(アクティビティベースドワーキング)を学習空間に応用したABL(アクティビティベースドラーニング)を軸に施設を構成しました。

施設は3 つの国際認証を含む、5 つの環境認証を取得。DE&I やウェルネスに配慮した施設整備と運営を実施し、人と地球環境にやさしい施設を目指しました。
環境負荷低減につながる多様な技術を導入、施設のBEI は設計値を上回る71%削減でZEB Ready を実現し、自家消費の太陽光発電と非化石証書付の電力購入でRE100(再生可能エネルギー100%)を達成し、年間約3,500 万円の水光熱費を削減しました。

企画段階から設計・施工、そして維持管理までBIM を活用しました。維持管理面では施設運営の分科会を立ち上げ、BIM の統合やFM システムの整備を行い、BIM-FM システムを作りました。
BIM-FM システムには設備情報、修繕履歴、不具合などの情報を集約しており、巡回・点検(モバイル入力)やメンテナンスの情報は各項目に紐づかれ、データを蓄積することができます。これらの情報はサーバー上で共有されることで、施設オーナーと施設管理者との円滑な連携に寄与します。
また、ここで蓄積された情報は施設利用状況・修繕傾向分析・施設改修履歴の可視化につながり、今後の施設計画の方針を決める判断材料になると期待されています。

世の中の役に立つ価値を生み出し続けるには、社会課題の中に事業を生み出す「ビジョンメイキング力」と、社内外の知恵を化学反応させる「プロデュース力」が欠かせません。
みらい価値共創センターを、そのような力を養える場所としていきます。
●サービス提供者
・株式会社フジタ
・大和ハウスリアルティマネジメント株式会社
・フジタビルメンテナンス株式会社
●講評
同社が2055 年に創業100 周年を迎えるに当たって、人財育成の場として設立した「みらい価値共創センター・コトクリエ」の施設計画と運用に関する応募である。2021 年10 月の利用開始なので、約1 年間の稼働期間である。立地は奈良市の同社工場に隣接し、旧平城京の域内にある。延床面積は17,000㎡、研修室5 室、宿泊室288 室を擁する。研修プログラムは開始したばかりで、活用の成果は数年後の検証を待つ必要がある。ただし、環境負荷の軽減、ZEB Ready 取得、RE100 実現、室内環境の利用者による最適化、WELL Platinum 取得、など施設整備はすぐれている。また、BIM-FM システムによる運営維持の体制、LCM を実行する保全による長寿命化、BEMS による使用エネルギーの見える化なども先進的である。建設投資に100 億円、年間のファシリティコストは14 億円という大プロジェクトで、人財育成にかける同社の姿勢が感じられる。全社的なFM 推進体制はプロパティマネジメント(FM の運営維持業務)が中心で、今後、戦略的なFM への発展を期待したい。