第16回(2022)

特別賞

  • リノベーション
  • ファシリティマネジャー

築90年の近三ビルにおける FMの取り組み -省エネと快適性

近三商事株式会社

築90年の近三ビルにおける FMの取り組み -省エネと快適性

FM の取り組み概要

近三ビルヂング(通称「近三ビル」)は、建築家 村野藤吾氏(1891-1984)が渡辺節建築事務所から独立後の設計第1作のビルとして、1931年に竣工し築90年になる。建築は竣工から㈱竹中工務店、空調・衛生は三機工業㈱、電気設備は㈱吉成電気工業所の3社で1994年にBELCA賞ロングライフ部門と2020 年に同ベストリフォーム部門を受賞している。

当社のFM活動においては、次の5つのキーポイントが特徴的である。
警備、設備管理、日常清掃をアウトソースせず、自前の管理で創意工夫。
テナントにとって居心地のいいビルになる。
環境に優しいビルになる。
省エネビルになる。
築古ビルのリーシングのため、ビルオーナー自らホームページで情報発信を行っている。

近三ビルでは、図表1の通り、外部からの省エネ診断やエネルギー使用分析とLEED認証のための取り組みと並行して、2度の耐震補強と各種設備の更新工事(エレベータ、空調、衛生、空調熱源、照明、受電等)では省エネ・高効率の機器を導入してきた。

特に第6期工事では貸室と共用廊下階段にLED照明導入。1~7階用の空調機をVAVとインバータ制御化し、ペリメータ空調は制御分離してFCUとブリーズライン吹き出しとした。

その結果2010年と2020年の比較では、年間の電気使用量は40%削減、デマンドは44%削減、光熱費は23%削減した。

一方ビルの売上は、2方向避難路確保により共用廊下が増え賃貸面積が減少したが、2010年の空室ありの状態から2020年は満室稼働となり、募集賃料も若干上がったことで全体では約20%の増収となった。

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図表1 近三ビルヂングにおけるFMの取り組み

FMの定着

近三ビルでは
(1) CAFM システム(2005 年~㈱竹中工務店「B-MASS」、2010 年~㈱ジャパンテクニカルソフトウェア「FM-EXP」に移行)を導入し、ファシリティマネジャーでもある専務自ら設備機器の位置、建物修繕や設備更新履歴などビル全体を把握した。
(2)東日本大震災を教訓に業務用無線機を導入し、スタッフ間での瞬時の情報共有を行っている。
(3)自ら補修方法や業者を模索した。
(4)東京ビルヂング協会での活動で得た知見を自社に実践、同協会で紹介されたもの導入した。
(5)東京都による2度の省エネ診断、一財)ヒートポンプ・蓄熱センターによる熱源システムのエネルギー分析等を通じて、ビルの客観的立ち位置と新たな知見を得た。
(6)図表2の通り、1つの取り組みをご破算にすることなく次々につなげている。その中でBEMS アグリゲータである㈱ヴェリア・ラボラトリーズ* には「電力見える化(EIA3)システム」とデジタルサイネージの表示支援を受けている。
また、Arc を用いたLEEDO&M 認証取得に関するコンサルタント業務を㈱ヴォンエルフに委託している。

* 同社は2022年1月にヴェオリア・ジェネッツ株式会社と合併

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図表2 近三ビルヂングにおけるFMの取り組み(FMの定着)

永遠に続く取り組み

Arc によるLEED O&M 認証も、BOMA360 認証も一定期間ごとに再認証が必要である。常に全世界のグリーンビルが持つ環境性能や新しいPM 管理基準への追随も要求される。弊社では両認証をベンチマークのツールとして活用し、今後も再認証取得に向けて努力を重ねたい。「休まず、出来る事から少しずつ前進」が近三ビルのモットーである。

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図表3 Arcスコア
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図表4 自動制御システム(空調熱源 画面)

●サービス提供者
・株式会社竹中工務店
・三機工業株式会社
・株式会社吉成電気工業所
・株式会社ジャパンテクニカルソフトウェア
・株式会社ヴェリア・ラボラトリーズ
・株式会社ヴォンエルフ

●講評
1931年竣工のオフィスビルにおける継続的なFM への取り組みの応募。ビルオーナー(三代継続)自らがリーダーシップをとり、ビルの性能や価値の向上に継続的に取り組んでいる。同ビルのFM は①自前の管理で創意工夫②テナントにとって居心地のよいビルになる③環境に優しいビルになる④省エネビルになる⑤情報発信、の5 つに整理されている。LEED のGOLD やBOMA360 認証取得をはじめ、ビル価値の向上に継続的に取り組み、電気使用料40%削減、光熱費23%削減と同時に売上高20%増という優れた成果を達成している。90 年間という長期にわたり、メンテナンスを続け、時代に即した改修を数次継続していることは、「古いものを大切に、長く賢く使う」というSDGs 時代のメッセージでもある。ビルの原設計者は村野藤吾で、建築界では森五ビルとして知られている。100 年を視野に入れる長寿命化達成は、原設計の質の高さに加えて、ビルオーナーの建物に対する愛情の賜物といえる。中小規模ビルにおけるFM の手本といえる活動は、特別賞にふさわしい。