第15回(2021)
最優秀FM賞(鵜澤賞)
学校法人聖路加国際大学
FM 導入の背景
当法人は1992 年の病院本館竣工時より積極的なファシリティマネジメントの導入を進めてきたが、建物の経年劣化や技術者不足が続き2015 年の時点で本格的な見直しが必要と判断した。
この現状を打破するため、他事例の見学を通してアウトソーシングという手段を検討して2017 年にNTT ファシリティーズをパートナーとして選定。アウトソーシングの内容は、統括責任者を中心に企画担当と維持管理担当が一体的に連携して、建築・設備を技術的な視点で運用支援してもらうことである。

ファシリティリスクとコストの見える化体制再構築にあたって、まず初めに建物リスクを判定して中長期整備計画の作成を行った。設備投資の集中と選択による建物リスクを低減する計画を策定し、今後どのくらいの費用が必要なのかという経営層からの質問の回答根拠を得た。
FM ツールを活用したオペレーション
従来の手書き管理からイントラを使ったシステム管理に変更。その結果、属人的な対応の改善やデータベースの確実な蓄積が可能となり、円滑なPDCA サイクルを回せるようになった。

FM 活動を通して得られた効果は定量的に評価した。98%トラブル解決率の維持や患者さんご意見の43%削減(対2017 年度)といった継続と見直しの繰り返しが重要と考える。

感染管理の徹底(PCRA) *1
病院において感染管理対策は重要な対策である。感染リスクの高い工事は感染管理室との定期ミーティングにおいて工事着工前リスク評価の情報共有を行い、JCI *2 にも対応した高水準な感染管理対策を徹底している。
*1 PCRA : プレ・コンストラクション・リスク・アセスメント 工事着工前リスク評価
*2 JCI : Joint Commission International 第三者の視点から医療施設を評価する国際非営利団体
管財課ニュースによるFM 情報発信
幹部を含めた全職員に管財課ニュースを配信。実際に発生したトラブルを分かりやすく注意喚起するとともに、われわれの活動を広く伝えることで、建築・設備とその管理の重要性を多くの人に理解してもらっている。

事業継続活動 ―災害対策強化と電気設備トラブルの対応―
電気設備トラブル発生から、対策本部を管財課に設置して院長をはじめとした50 名前後の多職種が連携して明け方まで本部に出入りし、翌日の診療体制を整えた。
その後も毎日のミーティングで情報共有と重大な判断が行われ、院内の正確な状況に基づいた復旧までの計画策定と実行シミュレーションを行い未曾有の大事故を最短で乗り切った。

2017 年に再構築したFM 体制で一定の成果を得たと考える。しかしファシリティマネジメントを継続していくなかで新たな課題も発見された。
1 つ目は、医療設備と密に連携したさらなる事業活動への影響最小化。
2 つ目は、近年悪化している自然災害への対策強化。
そして3 つ目は、限られたスペースの有効活用。設備の高度化や医療サービスの多角化に伴って、常にスペース不足に悩まされている。
今後はICT 技術の活用も視野に入れた課題解決に取り組みたい。
*3 BM :ビ ルディングメンテナンス 維持管理の意味
●サービス提供者
・株式会社NTT ファシリティーズ
●講評
聖路加国際病院は第3回(2009年)優秀FM 賞を受賞している。今回はグループ母体である学校法人の応募で、同病院を含む応募となっている。先の受賞時点からの変化は、①施設対象が病院だけでなく、大学など保有・使用する主要建物に広がっていること。②FM 推進体制を再構築し、内部リソース中心から、外部へのアウトソーシング体制を含むものへと改革したこと。③データ把握にもとづく効果的・効率的な品質・財務・供給の目標管理が進展していること、などがあげられる。2017 年から新体制で稼働しており、3 年経過している。2015 年度以降より取り組んでいる劣化診断などによるFM データベースの再構築から始め、総合的な活動につなげている。経営陣の強力なリーダーシップのもと、FM 担当者のモチベーションも非常に高く、わかりやすい言葉での院内への情報発信により施策の浸透が図られるなど、実施されているFM の質も大変優れたものである。新型コロナによる医療体制転換の緊急支援でも、こうしたFM の体制が活かされている。