第15回(2021)
功績賞
加藤 彰一 (三重大学大学院)
研究論文の執筆は、1979 年に大学院生として始まり、
2021 年4 月号に日本建築学会計画系論文集に掲載される論文まで、42 年間に総数465 編を数えた。研究テーマでは、病院の建築計画研究として、病棟平面構成の評価に看護業務や看護動線の調査分析を行い、看護業務に必要な物品にも言及、人・業務・建築の関係を検討する方法は、People-Process-Place を提唱したFacility Management Institute:FMI の主張と同じである。1984 年のFMI 訪問後、ファシリティマネジメントやFM を主題に入れたものだけでも60 編を数える。
研究対象別にみると、総数465 編の内、病院が4割強、ワークプレイス18%、大学17%、福祉施設6%、空港5% と続く。42 年間を概観するため、1979 ~1995 年までの17 年間を第Ⅰ期、1996 ~2008 年の13 年間を第Ⅱ期、2008 ~2021 年の13 年間を第Ⅲ期とした。
第Ⅰ期では、大学院修了後、1986 年まで久米設計に勤務、1986 年4 月から名古屋大学助手、1992 年に学位論文を執筆、同年から助教授として学生指導が始まった。この時期の総数71 編では、学位論文の執筆を反映して約8割が病院だった。2 年間は名古屋大学施設計画推進室室長を兼任し、大学キャンパス研究も重要な研究テーマとなった。
第Ⅱ期では、豊橋技術科学大学に赴任した1996 年から三重大学に移ってからの2008 年までの期間の13 年間。総数153 編のうち、病院約30%、ワークプレイス25%、大学13%である。病院研究では、ウェイファインディング研究の導入が特色で、ワークプレイス研究では、南アフリカから来た留学生Pieter Le Roux 君の学位論文(2005)の影響が大きい。大学関係では、ヨルダンからの留学生Fahed A. Khasawneh 君の修士論文(2007)がある。
第Ⅲ期では、三重大学の13 年間、総数241 編で、病院4割、ワークプレイス2割、大学2割、福祉施設1割となった。病院をテーマとした2 人の社会人ドクターである能登(古川)恵里氏と加藤雅之氏を指導したこと、ワークプレイス研究では三重県庁から県庁舎のFM を担当する安藤亨氏を、大学では国費留学生として再来日したFahed 氏を、福祉施設ではシンガポールの設計事務所を主宰するChan Seng Kee 氏を博士後期課程に迎えたことが大きい。また、助教として協力してくれた毛利志保氏の存在も大きい。

研究室の活動は博士前期課程の学生たちが中心である。グローバルな観点から、学生を指導。卒業設計の内容を英文論文としてまとめアジアの諸大学と行っているTri-U 国際シンポジウムに発表、国際インターンシップの助成金を受けて米国やシンガポールに学生を派遣した。日本建築学会の研究発表に加えて、米国環境デザイン学会edra にフルペーパー投稿を指導。修士論文の終了後に、日本建築学会計画系論文集への投稿を勧めている。
査読論文の数は49 編、研究テーマの内訳は総数の内訳を反映。日本建築学会計画系論文は15 編、米国環境デザイン学会edra のrefereed full paper は16 編。三重大では、edraなどの英文論文の数が増大した。米国で学生が学位論文の内容をIFMA で発表できることはほとんどない。コーネル大学のFranklin Becker 教授がそうだったように、在学中にはedra で研究発表をする。上記のedra refereed full paper の本数の意義を理解していただきたい。
●講評
1980 年代後半からのFM 活動、特に2007 年の教授赴任以来、三重大学における10 数年にわたるFM に関する学部・大学院での教育と、FM 関連の研究テーマの調査・分析などの業績、ならびに国内外の情報発信についての応募である。大学・大学院における、10 年以上にわたるFM 教育の実践は、FM を普及し、継承する世代を育てる意味から、賞賛に値する。FM の調査・分析では、国内の医療福祉施設を対象としたものが中心で、具体的であり、実際の施設計画・改善に応用されているものもある。調査・研究の論稿発表は241 編におよぶ。海外のFM への影響については本賞の評価対象ではないが、同内容の論文が国内で発表されている。調査の多くは実際の事例を対象とするもので、施設の改善にも活用されていることから、施設の発注者・利用者および計画の専門家にもよい影響を与えているものと推察される。総じてFM の発展に寄与する優れた功績といえる。