第14回(2020)

功績賞

  • リノベーション

ブルースタジオ20年間の実践と書籍「なぜ僕らは今、リノベーションを考えるのか」

大島 芳彦 (株式会社ブルースタジオ)

ブルースタジオ20年間の実践と書籍「なぜ僕らは今、リノベーションを考えるのか」

リノベーション黎明期

ブルースタジオが2000 年に「リノベーション」の旗印を掲げ設計、コンサルティングの事業をはじめて20 年。きっかけは父が1960 年代に建築した4 階建7戸の小さな賃貸マンション1室の改修だった。
30 年以上にわたって「現状回復」以上の手がつけられることのなかった往年の人気物件は、ハードのトラブルのみならず、多くの運営上のトラブルも抱えた問題物件と化していた。問題の根源は借家業が「不労所得」などと言われた時代の建物に対する経営感覚の欠如だった。

日本全国の諸都市は一様に戦後の復興期から高度経済成長、ベビーブームの時代を経て建築、インフラ、ハコモノに過大なる投資を続けてきた。しかしその成長とは裏腹にどの都市においても建物に対する経営、運営の感覚は醸成されず、多くの地域が人口減少の局面で急速に淘汰されてきた。
当時建築設計事務所に勤務していた自分が気づいたこと、それは自身が抱えた資産継承の課題は実は日本全国が抱えた社会課題であるということ。
その気づきをもって独立起業しようと決意した旗印が「リノベーション」だった。再び状況に革新、刷新を起こすための「Re Innovation」。建物の営繕、修繕の延長として形(Form) を再生する「リフォーム Re Form」とは一線を画するマネジメントの発想を持った考え方。

暮らしのパラダイムシフト

2000 年代初頭、リノベーションの考え方に対し不動産管理業界の反応は鈍かった。一方で当時新興の不動産金融業界からはアセットマネジメントの範疇で受け入れられていく。こうしてブルースタジオは外資系や新興の不動産金融事業者からの依頼によって多くのトラックレコードを積み上げることができた。

この期間に同時に起きた変化。それは生活者たちのモノ消費からコト消費への価値観の変化。新築一辺倒だった住宅市場にも中古住宅を改修し自分らしく住みこなす「リノベーション住宅」の選択肢が浸透した。

リノベーションの未来

不動産金融の世界に急ブレーキをかけたリーマンショック。だがそれとは裏腹にリノベーションの考え方はその後の本質的な社会環境の変化によって一気に社会に浸透することとなる。急速な人口減少、高齢化への波、地方衰退の現実、そして数々の災害が気づかせた地域コミュニティーの重要性。これらはすべて「既存環境マネジメント」としてのリノベーションの考え方が当たり前になる時代への幕開けを意味していた。

ブルースタジオの仕事は一気に短期運用を前提とするファンド関連案件から長期保有を前提としたCRE、相続不動産の有活、中心市街地再生、団地再生などの案件へとシフトして行った。
既存環境を再編集し未来の暮らしの環境を作るリノベーションの考え方は今、経済的な観点を超え、地域のアイデンティティーや誇り、そしてコミュニティーの潜在価値までをも再生し得る持続可能な生活者主導の暮らしの環境づくりのコンセプトとなろうとしている。

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●講評
応募者は、2000 年より約20 年間にわたり「RE*innovation」を掲げてリノベーション事業を継続してきた中心的な存在である。本応募は、FM とつながりの深い一連のリノベーション事業とそのエンジンとなってきた個人の業績に対するものである。「リノベーションとは、つくることにあらず、使いこなすこと」、あるいは「リノベーションは、人・場所・時間に関する潜在能力を最大化すること」というリノベーションの定義づけは、FM のめざす「賢く使う」ことに通じるものといえる。こうした発想のもとに、さまざまな20 年間のプロジェクトを通じて、人・街の潜在力を見出し、それを再編集して暮らしの総合的な環境を力強く、かつ優しく愛着のもてるものに育てていく努力を積み重ねてきたことに、共感する。FM の視点に照らして、十分な功績がある。