第14回(2020)
功績賞
湯淺 かさね (千葉大学大学院 博士研究員)
本研究の目的は、公共施設の屋外空間においてパブリックスペースの機能を発揮するためのマネジメントシステムを構築することである。これは、社会資本のストック価値向上・活用が求められるなか、多くの公共施設の屋外空間は未だ積極的に利活用されない傾向にあり、賑わい、交流、憩い等の機能を発揮するマネジメントの視点や方法論が確立されていないという背景に基づいている。
本研究では、公共施設の屋外空間における新たなマネジメントを「パブリックスペイシャル・ファシリティマネジメント:Public Spatial Facility Management( 以下、PSFM と記載)」として提示・検討した。そして、パブリックスペースの機能が発揮された状態をコンヴィヴィアル(Convivial)という概念で捉え、従来的な「外構」を「コンヴィヴィアルな空間」へ転換するためのマネジメントを「PSFM」と位置づけている。
PSFM の定義は、「公共施設の屋外空間が空間的拡がりを持った人々の活動の場となり、パブリックスペースの機能を発揮することを意図した組織的・継続的な取り組み」である。
コンヴィヴィアルという語は「共愉」や「自立共生」と訳されることが多いが、本研究では①空間、②アクティビティ、③地域運営、④継続性という4 つの観点からその概念を捉え、研究の分析のフレームとして用いた。3 つのケーススタディを通し、施設や周辺地域と一体となった公共施設の屋内外及び周辺地域連携型のマネジメントの検討を行い、PSFMシステムの構築・検証を行った。
本研究の特徴は,これまでの公共施設のFM において視点や方法が確立されていなかった屋外空間に着目し、新たなマネジメントの概念としてPSFM を提示する点にある。そして,パブリックスペースの在り方がまちの在り方に大きく影響するといわれる現代において,すでに膨大な空間ストックがある公共施設の屋外空間の観点から,新たなマネジメント論を提示するという意義を持つと位置づけることができる。
本研究はこれまでマネジメントの対象となってこなかった公共施設の屋外空間に関して、その基礎を提示したものであると考えている。
今後は、本研究で提示したPSFM システムの実行・検証・改善・戦略立案を繰り返すことで、公共施設の屋外空間が都市のパブリックスペースとしてマネジメントされ、都市にコンヴィヴィアルな空間が拡がることに寄与する研究を継続していきたい。
●講評
博士論文の応募で、同論文の表題にある「パブリックスペイシャルファシリティマネジメント(PSFM)を」テーマとしている。PSFM は、公共施設の屋外空間が空間的な拡がりをもつ人々の活動の場となり、パブリックスペースの機能を発揮できるように組織的・継続的に取り組むマネジメント活動をさす。本論文では、「パブリックスペースのあり方」が「まちのあり方」に大きく影響するという視点のもとに、すでに膨大なストックがあるパブリックスペースを、あまり大きな費用をかけずにいかに活用するかというマネジメント論を提言している。PSFM の視点による事例の評価の後、最終章では21 項目にわたる要求事項、4 つの特記事項をまとめて、地方自治体全体、FM 担当課、各施設所管課、地域住民、近隣事業者などが取り組むうえでの要点を整理している。これまで公共FM では、建物がマネジメントの対象となっていたが、本論文では、屋外空間についても適切に活用できるマネジメントをめざすべきという新しい視点を提供し、FM の普及・発展によい影響を与えるものとして評価された。