第14回(2020)

最優秀FM賞(鵜澤賞)

  • 公共
  • まちづくり
  • ファシリティマネジャー
  • 遊休施設
  • リノベーション
  • テクノロジー・DX
  • 地域貢献
  • 環境対策

持続可能な社会構築のための広域FM 神奈川県住宅供給公社の事例

神奈川県住宅供給公社

持続可能な社会構築のための広域FM 神奈川県住宅供給公社の事例

神奈川県住宅供給公社は、戦争で焼け野原になった神奈川県内での住宅供給を目的として今から70 年前の1950 年に組織されました。そして神奈川県は高度経済成長期に飛躍的な発展と急激な人口集中が起き、それらの解決策として大規模団地の開発が行われました。当時建設された、鉄筋コンクリート造、水洗トイレ、ダイニングがある集合住宅は「夢の団地」と言われました。
バブル崩壊とともに郊外部における大規模団地の開発も終わり、公社も莫大な負債を抱え、分譲事業からの撤退、公社解散や民営化も議論されましたが、2013 年に公社として組織・体制も新たに保有物件の賃貸事業に特化し再出発しました。

人口・経済縮小、超少子高齢社会そして保有する建物の老朽化が進む中、賃貸住宅114 団地、13, 500 戸、高齢者施設970 室を保有する公社は、所有する全資産を利活用して、持続可能な社会を構築する方針を打ち出しました。
資産価値の向上と公社の経営見直しは「ファシリティとしての団地再生」と「経営マネジメントとしての公社再生」の融合でした。さらに建物単体ではなく、神奈川県内に広域に分散された施設全てを集中管理するために、「広域FM」を構築し、50年以上前の老朽化した大規模団地を利活用して「地域創生」を進め、保有する全資産のポートフォリオのマネジメントを進めました。

c3aec4a3d9922a80e203ba5a1b792370-1776233434.jpg
広域ファシリティマネジメントへの取り組み

この経営改革の推進として「公社統合FM システム」を導入。これにより13,500 戸の住宅を住戸単位で管理することが可能になり、入居者募集窓口であるコールセンターの内製化による顧客ニーズの把握や入居契約・顧客情報、部屋の修繕履歴など、情報の一元化を実現し、業務改善・効率化・テレワークの推進にもつながっています。

4267d5498b4a1f9ac92b98eda4942ee5-1776233529.jpg
住宅のFM データベース化

現在、ライフスタイルやライフステージの変化に対応する賃貸住宅事業、「生涯自立」を掲げる高齢者住宅事業、SDGsへの取り組み、AA+(ダブルエープラス)という高い格付による低金利を追い風にした財政再建など約80 名の職員により事業を展開しています。

c515255582a69fab163cc2a9544b9e06-1776233616.jpg
ライフステージに合わせて住宅を住みつなぐ「生涯賃貸」

特徴的な取り組み例

「中井町メガソーラー発電所(足柄上郡中井町)・フロール横浜山手(横浜市中区)」
遊休地利用と自然エネルギー構築、CO2 の削減を兼ねた、メガソーラー事業。伐採した樹木は横浜市中区の建替え住宅の内装材に活用。

「アンレーベ横浜星川(横浜市保土ヶ谷区)」
築65 年の建物に外断熱化を含めた一棟丸ごとリノベーションを施し、省エネルギー対策と居住性の向上を兼ねた住宅として蘇らせた。

5f2467fd4d62460df176605636e5733c-1776236276.jpg
アンレーベ横浜星川

「浦賀団地(横須賀市)」
地元の大学と連携し、入居した大学生と共に新たなコミュニティを構築。団地の集会所などでミニコンサートを開催し、音楽を通しての世代を超えた交流を実施。

「フロール新川崎(川崎市幸区)」
時代を見据え、子育て応援マンションとして団地を建替え、認可保育所を併設。子育てによる新たなコミュニティの形成。

「若葉台団地(横浜市旭区)」
超少子高齢社会を迎えて、地域コミュニティの活性化による介護予防の推進や地域交流拠点による福祉のまちづくりを実践。

「相武台団地(相模原市南区)」
商店街の空き店舗を活用した多世代交流拠点や芝生広場など憩いの場を整備、さまざまなプロジェクトでコミュニティの活性化を図る。

「二宮団地(中郡二宮町)」
高度成長期に開発された大規模団地。内装に地域木材を活用してのリノベーションや、地域住民、町と公社の協働で、農業や音楽などの地域イベントを開催し、まちの魅力を発信。3 年間に150件の新規移住を実現。

空き家が増え住宅が余り、住まいは供給の時代から、くらし方をリノベーションする時代へ。そんな中、公社は今年創立70 周年を迎えます。今後もソーシャルエンタープライズ(社会的企業)として、社会的問題を解決するとともに、収益事業に取り組み、利益を再投資して社会に還元。人とまちの健康をつくる公社として社会に貢献していきます。

●サービス提供者
・株式会社オービック
・株式会社フューチャーネットワークス
・一般社団法人かながわ土地建物保全協会

●講評
既存公社住宅ストックの再編成・利活用が大きな経営課題となっている同公社は、約7 年間、FM の視点による経営改革を推進している。ライフステージの変化に対応する賃貸住宅事業、「生涯自立」を掲げる高齢者住宅事業、SDGs への取り組み、財務再編成など、山積する課題を幅広く、着実に解決して前進させ、成果をあげている。FM の財務・品質・供給の3 視点がバランスよく、長期を見据え戦略的に展開されている。その基盤となっているのがFM のデータベースで、全施設の状況が的確に把握でき、PDCA を回して更新されている。理事長以下、80 名足らずの職員により、賃貸住宅114 団地、13,500 戸、高齢者施設970 室について、ニーズの変化、地域社会への貢献なども盛り込み、負債を低減するなど、賢く経営し、活用する事業を展開しており、高く評価された。