第14回(2020)
特別賞
日本郵便株式会社 株式会社アカツキライブエンターテインメント
日本郵政グループ(以下JP グループ)のファシリティマネジメント(以下FM)は、郵便・貯金・保険など生活に身近なサービスを全国津々浦々にお届けするため、郵便局をはじめとする事業用資産を健全な状態に維持管理することが基本である。その過程で、各事業用資産を内部・外部価値の観点から評価し、条件に合う場合には順次不動産事業への転用を図っている。
郵政事業は創業以来、地元との共存共栄を事業の基本精神としてきたが、民営化で可能になった不動産事業においても、地元との永年の関係性を継承しながら周辺エリアの発展に貢献することを目標に取り組んでいる。

横浜中央郵便局を含む横浜駅東口地区では、「国際都市の玄関口としてふさわしいまちづくり」を進めるために組織された「エキサイトよこはま22」が策定した指針に基づき、市街地再開発の事業化に向けた検討が進められている。
日本郵便はいち早く同事業への参画の意思を固め、郵便局の一部機能を別位置に移転させて備えたが、その後も検討は続いており、事業着手の時期については明確な目途が立たない状況である。
その結果、郵便局別館はしばらくの間空き家の状態が続き、駅前の一等地にもかかわらず「活力のブラックホール」と化す懸念が生じた。駅前エリアの賑わい醸成を意図した措置が、逆に水を差す結果になりかねない皮肉な状況を前にして、日本郵便としての判断が求められた格好である。
さまざまな議論を経て、再開発事業開始までの期間限定にはなるものの、地元との共存共栄の観点から、空き家となった別館の活用策について、賑わいづくりのプロと一緒に進めようとの結論に至った。
具体的には、別館の建物・設備を日本郵便が受け持ち、内装を含むコンテンツ全般をアカツキライブエンターテインメント(以下 ALE)が受け持つ、いわゆるスケルトン& インフィルを分担しあう共同プロジェクト(定期借家契約)として本プロジェクトが始まった。
また、われわれの意図を理解してくださった横浜市のご配慮で、駅の改札口からつながる「横浜駅みなみ通路東口暫定通路」に面して新たに出入口を設置できたことで、駅からのアクセスは格段に改善された。
こうして総合エンターテイメントビル「アソビル」が誕生したわけだが、幸いにも、開業から3カ月で来館者が100万人を超えるなど、当初目標を大きく上回る成果を生んだ。また、体験型コンテンツを中心としたユニークな施設展開は、老若男女幅広い支持を得てTV・雑誌等で大きくとり上げられるなど、予想を上回る反響もいただいた。

JP グループでは、全国約2 万4 千の郵便局をはじめ多くの事業用資産を維持管理するためにインハウスの体制のもと、着実にFM 業務を推進してきた自負があるが、そうした地道な取り組みは、本件のように解体を待つ築50 年超の空き家ビルの暫定活用策として、急遽本来とは異なる用途で使用するという想定外の事態にも的確に対応することができた。
ここまで紹介してきた施設暫定活用プロジェクトは、日本郵便とALE が車の両輪として推進している初の事業である。幸いにも想定を上回る成果を収めることができており、その結果、駅前エリアの活力創造に貢献するとの目標はひとまずクリアしているのではないかと、自己評価している。
この取り組みが今後予定される再開発事業への誘い水となり、同事業の成功と地元の地域の発展に貢献できれば幸いである。
JP グループでは、今後も地元との共存共栄を基本に、CRE 戦略のひとつとしてFM を推進していきたい。

●サービス提供者
・株式会社コスモスモア
・株式会社ヒトバデザイン
・株式会社伊藤木材設計室
●講評
日本郵政グループのCRE 戦略実践の1 つとして、遊休施設の時限的活用により、地域の活性化を促進した事例の応募である。横浜中央郵便局別館は、機能移転の結果、空き施設となり、再開発プロジェクト始動を待つことになった。そこで、横浜駅東口の好立地を利用し、再開発始動までの暫定期間を賑わいのある都市活性化が期待できるテナントをプロポーザルにより誘致し、施設のリノベーションを行い、有効活用する施策が採用された。財務的なスキームはオーナー側のスケルトン貸し、内外装・設備など新規改修(資本的支出)はテナント側で、投資リスクはテナント側が大半を負う代わりに、賃料は軽減されている。一時的な空き施設を活用する代替策としては、都市の活性化、イメージ向上に貢献するユニークな好事例だと認められる。