第13回(2019)
功績賞
上森 貞行 (盛岡市財政部資産経営課)
総務省の要請を受け全国の自治体が公共施設等総合管理計画を策定し、2020年度までに個別施設計画の策定を進めている。しかし、施設再編には総論賛成各論反対の壁があるほか、長寿命化には大規模な財政出動が必要であることなどから、多くの自治体でマネジメントが進展していない。
本研究では、全国の先進自治体が具体的にどのようにマネジメントに取り組んでいるかを、「再編(供給)」「長寿命化(品質)」「財源確保(財務)」の3つの視点から整理した。また、特徴的な取り組みである「数値目標」「施設評価」「市民参加」を加えた6つの視点から、各自治体の取り組みをレーダーチャート分析し、人口規模、財政力、面積等の地域性に応じてマネジメントの方法が異なっていることを明らかにした。
「大都市又はその近郊」では、資産価値が高く民間資金を活用した再整備が行いやすい。財政力も比較的高く、建替えを前提とした集約・複合化による再整備が展開されている。
「地方中核都市」では、資産価値の高い地域が限定的であるため、再編及び長寿命化の双方に重きを置いた取り組みが進められている。施設評価により存廃を検討した上で、継続施設に対して大規模改修等の長寿命化が行われている。
「地方小都市」では、財源確保が難しく、延床面積縮減目標を大きく設定し再編に重きを置いた取り組みが行われている。地元譲渡施設を数多く定め、機能をできる限り継続する取り組みが展開されている。
本論文は、筆者が国土交通大学校のPRE/FM 研修アドバイザーを7年間務める中で、自治体の担当者が実務で悩む点(「数値目標はどう設定するか」「施設評価は行うべきか」「市民参加はどう行うか」「マネジメントは何から着手すべきか」等)に着目し、先進自治体の取り組みを分析したものである。本研究が、全国における実効性のある公共施設マネジメントの普及の一助になれば幸いである。
●講評
岩手県立大学大学院総合政策研究科から授与された2017年度博士論文の応募である。2014年に各地方自治体に総務省から公共施設等総合管理計画が要請され、3年内の期限があったが、その1年後に「策定済」と回答した先進的な75 の自治体を中心に、公共施設マネジメントの内容を分析し、あり方を検討している。品質・財務・供給の3視点から個別施設計画の内容を分析して、再編・長寿命化・財源確保の3指標、それに加えて数値目標・施設評価・市民参加の3指標の計6指標により、自治体の特徴に応じた公共施設マネジメント手法を分類している。そして、大都市または近郊、地方中核都市、地方小都市の3 つにおける特徴を分析している。地方自治体の職員による博士論文という点は評価できる。公共施設等総合管理計画は、引き続き個別施設計画をするよう要請が更新されており、各地方自治体の参考になる。