第13回(2019)

特別賞

  • 公共
  • まちづくり

復興まちづくりにおける庁舎づくり -まちの未来につながるFM

宮城県南三陸町

復興まちづくりにおける庁舎づくり -まちの未来につながるFM

取り組みの背景

南三陸町では、東日本大震災の復興に際して「森、里、海、ひと、いのちめぐるまち」を町の将来像として掲げ、豊かな自然由来の地域資源を生かす施策にターゲットを絞り、町の未来戦略を描いていました。町の林業は約400年前からの伝統産業ですが、水産業等と比べれば目立たない状況にあり、町の林業関係者達は持続可能な林業復興のため「南三陸杉」のブランド化を計画し、「山さ、ございん」プロジェクト実行委員会を立ち上げました。それに町も協力し、2015年10月に町有林など約1.5ha の森林が、国際的な森林認証制度FSC の森林管理認証を取得しました。

FM としての取り組みの柱

こうした中で、本庁舎と総合支所の再建プロジェクトに際し、FMの取り組みとしての2 つの柱を考えました。

1つめは町経営の視点から、町の施策と呼応し、新庁舎が「南三陸杉のショールーム」となり、町の持続可能な生業の創出に貢献することです。その手法のひとつとして、公共施設としては日本初となるFSC 全体プロジェクト認証取得をめざすことを掲げました。

2つめは復興の中での意義として、復興の励みとなり、震災で失われた町の人と人との「つながり」を取り戻すことです。未来に向けた新たな町の物語を紡ぐための協働・交流の場「マチドマ」を生みだすことで、利用者である町民に貢献することを考えました。

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公共施設で日本初となるFSC全体プロジェクト認証の取得

全体プロジェクト認証取得に関しては、コストや供給時期の課題に加え、入札不調リスクもある中で、チャレンジすることを町長が決断しました。そして選定された施工者を中心に、町内関係課を含めた「新庁舎FSC認証材利用プロジェクトグループ」を組織して町を挙げて取り組み、2017年8月、竣工とほぼ同時期に全体認証を取得しました。
これにより、2017年には、本町でのFSC認証材の生産量は庁舎建設前の約12.5倍に拡大、COC認証業者(加工・流通業者)の数も3件に増加しており、林業振興への貢献が伺われます。また、町産材を使った木製品も増加し、新庁舎後に整備される「生涯学習センター」においても、2例目となるFSC 全体プロジェクト認証取得を目指すこととしました。

さらに、町内外のFSC認証原木の取引業者の数は、庁舎建設前後で比較すると1件から5件に増加しており、本町と周辺地域のつながりの中で、新たな生業が生み出されてきている様子が伺えます。これは自己完結型ではなく、相互協力・連携協働型でのまちづくりが進行していることと理解されます。

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「マチドマ」の創出

町民の協働・交流の場「マチドマ」は、町の未来を担う高校生を含めた町民ワークショップを開催し、具体的な利用イメージを発展させて行きました。そしてそれらに対応した「しつらえ」が可能なように、可動間仕切りや移動家具等を検討し、実現化しました。

開庁後の1年間での本庁舎のマチドマ利用率は44.7%で、利用用途としては展示会が圧倒的に多くなっていますが、町の伝承意匠である「きりこ」のワークショップが行われたり、南三陸町病院の建設時に支援をいただいた台湾からの学生達との国際交流の場としても活用されたりしています。「マチドマ」はすでに、生活の身近にあるコミュニティの場として、町民に定着し始めています。

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これからの展開

今後も「山さ、ございん」プロジェクト実行委員会の活動を、本町における林業振興活動の核として、町の全面支援のもと、さらに推進していく予定です。
また、町民が主体的に活用するマチドマをめざして、公共施設マネジメント会議の下に、町内関係課の横串をさした「マチドマ活用ワーキンググループ」を組織し、町民を含めた官民協働体制で運営支援を行う予定としています。

●サービス提供者
・株式会社久米設計
・南三陸町新庁舎建設FSC認証材利用プロジェクトグループ
・「山さ、ございん」プロジェクト実行委員会
・東北大学大学院 小野田泰明 教授

●講評
宮城県南三陸町の本庁舎の再建プロジェクトを中心とする応募である。東日本大震災からの復興をめざす公共プロジェクトの1つとして、まちづくりにつながるシンボル的な存在といえる。従来の行政・議会機能に加えて「マチドマ」という町民活動・交流の拠点づくりが意図されている。また、適切な森林管理とその森林からの木材・木材製品を認証する「FSC 認証」を取得した町産材を多用することで、南三陸杉のショールームとしても位置付けられている。竣工は2017年8月で、その活用についてはマチドマの運営のみならず、今後の施設活用・まちづくりへと進める組織体制、さらには同町の公共施設全体の最適化を図る全庁的なFMの推進体制構築を期待したい。