第12回(2018)
功績賞
早稲田大学理工学研究所 公共所有不動産の経営研究(MoRE)
公共所有不動産の経営研究(MoRE)
小松幸夫 堤 洋樹 池澤龍三
わが国の地方自治体や政府が所有する公共の不動産は、ストック量の肥大化に伴う総量の適正化、老朽化対応、運営体制の効率化や高度化、ライフサイクルコストの適正化など様々な課題を抱えている。
そこで公共の不動産、特に学校施設を中心として公共施設の運営段階における経営およびマネジメントに関する研究を行うため、早稲田大学理工学術院総合研究所のプロジェクト研究「公共所有不動産の経営研究(研究代表:小松幸夫教授)」が立ち上がった。
本書は、プロジェクト研究活動を通して明らかになった公共施設マネジメントの要点を地方自治体の職員や議員にむけて発信するため、「公共施設マネジメントのススメ(早稲田大学理工研叢書シリーズ、建築資料研究社、2017年3月)」と題し研究メンバー3名で執筆した。
公共施設マネジメントに関する書籍はすでに数冊が発行されているが、本書の「はじめに」の一部を引用して他書籍との相違をご紹介したい。
…マネジメント全般について書かれた本は数多くありますし、PDCA サイクルの重要性はわかっているという方も多いと思いますが、マネジメントを実行に移すために必要な準備段階について解説したものは少ないように思います。本書にはマネジメントの基礎となる情報の収集・利用の話や実行体制の構築、マネジメントを段階的に進めていくことの必要性とその際の考え方、用いるべき手法などについてが書かれています。また先進事例として知られている自治体の状況を、当事者でもあった筆者の一人が詳しく解説しました。これから施設マネジメントを始めようという場合、そしてすでにある程度まで進めているという場合にも参考にしていただけると思います。…
最後に公共施設マネジメントは多角的・複合的な検討が不可欠である。だからこそ自治体職員だけではなく、住民や民間企業との協働も不可避である。
<本書の構成>
1 章 なぜ公共施設マネジメントが必要なのか
2 章 施設マネジメントと建物の長寿命化
3 章 情報管理の仕方
4 章 整備計画策定のための準備と作業
5 章 公共施設マネジメントの実行体制
6 章 実例で見る公共施設マネジメント
7 章 公共施設マネジメントの今後の展開
●講評
2017年に出版された、公共施設マネジメントにどのように向き合うかを解説した書籍に関する応募である。建築の点検や維持保全の方法論など、公共施設マネジメントのハウツー論ではない。自治体職員が取り組むための方法論として、①基本的な基礎データの収集と活用、②実行体制の構築、③マネジメントを段階的に進める必要性と手法などに焦点を当てている。「公共施設マネジメントは、つまるところ、日本の将来、地方の将来をどのよう姿にしたいのか、が出発点になるべき」という。公共施設についても、公共サービスのあり方をどうするかという思考を出発点にして、関係性を考え、将来のまちづくりのなかで位置付ける必要があると説く。副題のとおり、「悩める職員向け」で、準備段階からどうするか、各地にある事例からどう学ぶか、という基本的な解説がされている。公共FM に取り組む自治体職員の道案内となる出版物といえる。