第12回(2018)

優秀FM賞

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創造的FM手法による公民のパートナーシップの実現―我が国最大の病院PFI事業―

多摩医療PFI株式会社

創造的FM手法による公民のパートナーシップの実現―我が国最大の病院PFI事業―

事業の特徴

病院PFI事業にFM手法を導入した取り組みである。
あらためてPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)とは、公共施設の設計・建設・維持管理及び運営に、民間の資金およびノウハウを活用し、公共サービスの提供を民間主導で行うことで、効果的かつ効率的な公共サービスの提供を図るという考え方である。(日本PFI・PPP 協会HPより)

弊社は、都立病院改革の一環として計画された都立多摩・小児総合医療センターにおいて、PFI事業を実施する特別目的会社(Special Purpose Company、以下SPC)として2006年に設立された。計画段階から、開院後の維持管理と運営を15年間自ら行うことを見据えて設計を行い・施工および開院支援を行い、2010年に開院してから8年が経過した。

開院後は、施設維持管理・食事の提供・検体検査・医療事務・薬品や診療材料の調達など、幅広い運営業務を受託しており、特に「サービスプロバイダー業務」という、運営業務の統括管理と経営支援機能の総合的なマネジメントを実施している点が、本事業の最大の特徴である。(図表1)

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図表1 事業体制図

大きな病院での幅広い業務

両院は患者、家族、病院職員、委託企業従業員など、8,000名以上が毎日過ごす生活の場、仕事の場であり、ひとつの社会を形成している。ここで多様な職種がチーム医療のもとに24時間365日ノンストップで高度医療を提供するためには、従来の枠組みにとらわれないサービスの創造が必要と考えた。そのため、FMの対象領域を下記のように分類し、それを管理するためのインフラを構築した。

①5つのマネジメント対象領域を設定 医療施設の特殊性および、患者と医療職の中間に位置する当社の立場を考慮し、東京都がSPCに要求した機能が発動するしくみとして、まずは施設FM、情報FM、病院運営FM・診療医器材FM・経営環境FMという5 つの領域に分類した。(図表2)

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図表2 5つのマネジメント対象領域

②全体最適を実現するしくみ・インフラの創造 
5つの幅広い領域のマネジメントは経験したことのない試みであったが、全ての業務プロセスを標準化・可視化・定量化して横刺しで管理するしくみにより、提供するサービスの質の全体最適を図っている。また、サービスレベルを持続的に向上させるためには、属人的スキルに頼らないしくみも必要である。そのため、従業員が共通で使える帳票や、誰もが報告しやすい環境を用意した。ひとつの例としては(図表3)に示す職員専用のコールセンターなどであり、ここに届いた声は今年で10万件を超え、各部署に自動でフィードバックされている。

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図表3 職員のためのコールセンター「サービスデスク」

FM 手法導入の効果

ともすれば利害関係に陥りやすい顧客(病院)と受託者(SPC)だが、SPC、病院職員、協力企業がインフラを共有してPDCAを一緒に回していることにより、同じベクトルを向いて成長しており、自律的に学習し続けている。
全てのサービスを民間事業者であるSPCが統括マネジメントできることで、業務間のすき間の調整、客観的な指標に基づく業務改善が継続して実施でき、病院側と民間事業者間のパートナーシップが醸成されている。

また、同一事業者が建設から病院運営まで関わるというビジネスモデルにより、運用変更や再投資などの案件に対して、より迅速により効率よく対応することができ、利用者満足度や効率性が向上してきている。今後も受賞を励みに良い病院となるよう取り組んでいきたい。

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図表4 BCPの一例 災害時にどこまで電気が使えるか、実際に全館停電状態をつくり、負荷をかけながら決定した

●サービス提供者
・清水建設株式会社

●講評
東京都立多摩総合医療センター(789床)、東京都立小児総合医療センター(561床)2院による複合医療施設に関するFMの応募である。東京都がSPCに包括委託を行うPFI事業で、日本の医療施設PFI では、最大の規模となる。SPCは、病院経営、医師・パラメディカルの人事など医療コア業務をのぞいて、施設管理、情報管理、病院運営サービス、医療器材管理、経営支援などのサポート業務を包括的にPFI 事業として受託している。開院以来7年間の運営実績があり、医業経営の支援、情報管理を含む運営のBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)体制は、よく整備されており、医業を支援するサポートサービスとして、経営に貢献している。また、BCP対応、CO2削減などで、大きな効果をあげている。