第11回(2017)

優秀FM賞

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文化財として保存した庁舎の活用とFMサイクルの浸透 -鬼北町庁舎再生への取組み-

愛媛県 鬼北町

文化財として保存した庁舎の活用とFMサイクルの浸透 -鬼北町庁舎再生への取組み-

価値を付加し保存した庁舎

戦後、特に昭和の大合併時に多くの庁舎が建築され、耐震性能や現代機能不足が問われ、平成の大合併により解体の道へと歩む庁舎が数多くある。当庁舎も例外ではなく、新庁舎建築か保存活用かの選択の中で、日本の近代建築を牽引した著名な建築家「アントニン・レーモンド」の事務所が設計した建物であるという歴史的価値を登録有形文化財として付加し、保存改修後、庁舎として使う道を選択した。

具体的取り組み内容

庁舎の保存再生に関しては、歴史的文化的検証と耐震診断及び耐震改修の観点から調査研究し、策定された改修基本計画の方針に基づき、1958(昭和33)年に当庁舎の設計を担当したレーモンド設計事務所に改修工事の設計を委託。その後、設計と工事に関する監修を役割とし、学識経験者等で組織する庁舎設計監修委員会を設置、官・民・学の連携により取り組んだ。

庁舎改修と事務改善

庁舎改修は、50年に一度の建物改修だけでなく、事務改善に取り組む50年に一度のチャンスと捉え、機能整備や業務の効率化を図ることを目的に「行政サービス向上プロジェクトチーム」(以下、PT)を設置。PT は、40歳以下、行政経験10年以上、前例踏襲にとらわれない建設的な意見を持ち、執務の効率向上に真摯に取り組める者8名で構成された。

PTは、FMも含め町民目線の庁舎のあり方、職員としてのあるべき姿等を幾度も会議を重ね検討した。結果、ワンストップサービス、シンクライアント環境、私物化意識を払拭するため引き出しをなくしたフリーアドレスデスク、総合窓口の設置のほか、全課のファイルメーターを計測し、必要最小限のキャビネットを設置することで15t以上の軽量化を実現させ、建物への負荷を軽減した。こういった事務改善の成功背景には、そうせざるを得ない「物理的な仕掛け」を伴わせた環境を構築したことにある。

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効果と費用

昨今の新庁舎建築事情を見ると、当町の規模でも10億円は下らない費用が必要と思われる。併せて、新庁舎を建設した場合、土地の取得費、旧庁舎の取り壊し費用、さらには取り壊し後の更地の活用問題等も発生することとなる。

当町の事例は、文化遺産として町民の誇りとなる建物として子々孫々継承され一世紀の歩みを期す、まさに「町の宝」として歴史に刻むことと併せ、FMの原点に沿ったものであり、規模の小さな自治体にとって、老朽化した今後の庁舎のあり方を示唆する内容であったのではないかと思える(本庁改修事業費3億8千2百万円)。

おわりに

鬼北町庁舎は見事に再生され、建物は有形レガシー(遺産)となったが、どんな建物でもいつかは壊れる時がくる。反して、今回の事務改善によってわれわれが学んださまざまなおもてなしの精神性は、今後採用される職員へと永遠に引き継ぐことのできる、壊れることのない普遍で無形のレガシーではないだろうか。この受賞に恥じない行政サービスの提供を今後もめざしていきたい。

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1階待合所                   2階執務風景

●講評
人口1万人強の町役場がFMに取組んでいる事例。鬼北町は、愛媛県南西部の中山間地域にあり、高齢化率は41%と非常に高い。町役場は、1958年竣工したレーモンド建築設計事務所の設計。耐震補強の必要性、老朽化への対応で、建替えを検討していたが、文化財(登録有形文化財)として活用を決定。改修費用は3.8億円+木造庁舎増築(2.9億円)で、建替え費用の10億円と比べて安価にできた。職員の意識改革、窓口ワンストップサービスなどワークプレイス改革、紙書類削減も進め、町おこしの拠点となっている。耐震改修は、デザインの特徴を損なわないよう配慮されている。その他、町では廃校校舎の企業誘致による活用、JRバス施設の用途変更による歯科医院への転用、旧法務局のケーブルTV局による転用など、官民問わず、既存施設の有効活用を図っている点なども評価された。