第11回(2017)
最優秀FM賞(鵜澤賞)
青森県弘前市
弘前市は、お城とさくらに代表される数々の文化遺産と、恵まれた自然環境を土台に文化都市として発展してきた。
藩政期の建築、明治・大正期の洋風建築、昭和期の近代建築、前川國男の作品群など多くの歴史資源が現存している。
市では、あらゆる公共施設を創意工夫により活用し、魅力あるまちづくりをFMの視点で取り組んでいる。

歴史的・文化的な建物を単なる文化財施設として維持するのではなく、そこに経営資源として無限の可能性を秘めていると確信し、リニューアルやコンバージョンを進め、歴史資産の動態保存と民活導入による観光資源化など新たな価値を創造し、活用を推進してきた。弘前市のFMにおける非常に特徴的な取り組みである。

①弘前城本丸石垣修繕活用事業
修繕工事を「自分ごと化」することに成功し、市民・観光客を巻き込んだイベントを実施した。2015年9月に行った天守曳屋には、8日間で3,900人の参加があり、この様子は国内外のメディアで取り上げられ、約25億円の広告効果があった。(弘前市調べ)
②旧第八師団長官舎のコンバージョン
国登録有形文化財で、以前は市の会議室として使用していた旧第八師団長官舎をカフェへコンバージョンし、建物の趣を残したまま民間活用を図った。行政財産の新たな管理の例となる。
③弘前公園外濠の花筏(はないかだ)
弘前公園外濠を準用河川に指定し、河川維持用水として導水し、水流の調整を図ることで花筏* を形成、新たな景観価値を構築した。インフラ施設を経営資源として活用。

* 花筏(はないかだ)。 濠に散った桜の花びらがまるでピンク色のじゅうたんが敷いてあるように見える。2014年「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」で世界一になる。
④前川建築の継承
前川國男設計の市役所本庁舎、市民会館、市立博物館を次の50年を見据えた改修を行い、時代に合った設備改修や機能向上を実施しつつ、建築当時の失われたオリジナリティの復元をするなど、技術と意匠の「継承」と「革新」をしている。
超高齢化・人口減少社会の進展に伴うインフラの再編や高度・安定成長期に整備された膨大なインフラ更新にかかる将来の負担を最小限にするため、近隣の市町村や県と共同で事業を行うかたちを見い出し、効率的な更新・維持管理による事業費の削減を図った。
弘前市では『子どもたちの笑顔あふれるまち 弘前』の実現に向け戦略を展開しており、子どもたちが『将来のメインユーザー』と位置づけ、FM に関するさまざまな取り組みに理解を深めるとともに、その未来予想図を考えていこうと、小学生を対象とした出前講座を実施している。

人口減少問題の緩和へ、今後いかにFM を進めていくか。それには、ドラスティックなアイデアをもってFMに取り組み、その成果を未来へ投資することで持続可能な魅力あるまちづくりの実現につなげ、この弘前から、「弘前流地方創生」を推し進めていく。
●サービス提供者
・株式会社前川建築設計事務所
・株式会社西村組
・スターバックスコーヒージャパン株式会社
・株式会社まちづくり計画設計
・アズビル株式会社
●講評
人口約18万人を有する青森県第3の都市、弘前市による公共施設67.3 万㎡(3.76㎡/ 人)へのFM導入による好事例。2010年の葛西市長就任以来、AMとFMの導入を掲げ、2013年にはFM担当部署を発足させている。2014年度には「弘前市経営計画」に「公共施設の適正管理」を掲げ、2016年2月には、公共施設等総合管理計画を策定し、2016年度末までに実行計画を策定中である。弘前城、弘前城公園、市庁舎、市民会館などを「文化財」として次世代に継承し、観光にも活用する戦略である。汚水処理施設の共同整備、下水処理場の統合化、電算システムのクラウドによる共同利用などの広域連携もある。市長自らが小学校でFMの講座を行うなど持続可能な自治体経営に不可欠なものとしてFMを位置づけ、普及啓発に努めている。さくら、りんご、お城、前川建築なども継承・発展すべき経営資源ととらえ、活用と継承を図っている。市庁舎も窓口をワンストップサービス化するなど行政改革も努力しているなど、総合的に高く評価された。