第10回(2016)
優秀FM賞
学校法人鈴鹿医療科学大学
過去からのストック建築が現在・未来にわたり貢献していく優良な事例としてJFMA 賞の優秀ファシリティマネジメント賞を受賞でき、ご紹介できたことで、これまでこの建物にかかわりを持った方とこれからかかわりを持つ方とが、建物を通じてつながっていくよい機会となった。
私は、以前、電電公社の建築部門に在籍し、FMという概念がまだない頃に建物維持保全に携わり、建物を延命させることにやりがいを感じていたので、古くても優秀な建物が、後世に受け継がれていくことは大変喜ばしいことである。

企業が保有する閉鎖された広大な研修施設跡地は、2002年から鈴鹿市を事業主体とした利用転換計画策定協議会により、鈴鹿医療科学大学の白子キャンパスとして、薬学部等を計画のコア機能とした産業振興や市民の健康福祉向上を目的に有効利活用を図ることとなった。
敷地内には教育施設のほか、研修宿泊施設・陸上競技場・野球場・競泳プール・体育館・武道場など相当数の施設があったが、大学としての要素を満たす利用価値の高い建築群の部分を活用して2008年4月の開学を目指してリニューアルを進める計画となった。
当該の建築群には第6回・第13回の中部建築賞の入賞作が含まれており、サステナブル(持続可能)なストック資産の利活用が図られた。

STEP 1. 既存建物のポテンシャルを最大限に発揮する
薬学部(白子キャンパス)新設では、敷地と建物の特性を最大限に活用したリニューアル手法による整備となった。既存施設が本来持つ特性を甦らせることに加え、新たな機能を付加することで薬学部設置の目的を果たす計画とした。7年間の未利用期間を経た外構施設の復旧・改修と1号館・5号館・講堂・コミュニティハウスの4棟をリニューアル対象としている。
STEP 2. 看護学部創設
看護師不足に貢献するため、2008年から未利用の4号館をリニューアルして機能的で快適な新たな勉学の場として整備するほか、新学部の学生や1年生・教職員が増えることによる食堂の不足を解消するために、地下の設備機械室等を食堂に改修して既存ストックを最大限活用した。
STEP 3. 教育改革に伴うスペース不足への対応
基礎分野の学習内容を一新し「医療人底力教育」を新たに導入する教育改革を行い、別キャンパスで行ってきた1年生の基礎教育の場を白子キャンパスに移動させた。
この計画では、特別講義、グループ活動や学生が溜まれる場を整備する必要があり、1年生の共有科目の授業を行うため、未利用の3号館をリニューアルして活用するほか、教育改革に伴う学生の増加による講義室および学生の居場所(ラウンジ)の不足を補うため、講義棟が建設された。

STEP 4. 運営管理業務
維持管理業務では、リニューアル時に再用可能な設備機器が最大限使用されていることを念頭に、機器の故障発生時の対応が、劣化によるものか瑕かし疵かで対応が変わるため、初期対応を行う維持管理担当と、判断等を行う設計担当・工事監理担当が連携よく対応している。
今後の課題は、建物ごとに作成した中長期計画を統合し、定期的に見直しを行い再用した設備機器等をどのように更新していくかである。
これに対して、大学側と連携し財務状況に合せて更新計画を作成し大学のさらなる発展のため、経営に貢献していくことが弊社の使命と考え、会社組織として取り組んでいきたい。

●サービス提供者
・株式会社NTT ファシリティーズ
・株式会社NTT ファシリティーズ東海
●講評
廃止となった旧NTT鈴鹿研修センターの施設群をリニューアルし(2007~14年)、医療系4年制大学施設として活用している事例。旧施設は、必要に応じ財務状況と照らして、順次改修がされており、1棟は新築されている。2014年の段階では2 学部4 学科(2008年開設時は1学部1学科)が活用している。施設の改修と施設管理(運営維持)はFM専門企業が担当しており、既存施設の有効利用が計画・運営維持の段階を通して機能している。ストック活用の好事例として高く評価された。