第10回(2016)

優秀FM賞

  • テクノロジー・DX

FMコストの見える化とプロセス再構築への取り組み

株式会社みずほ銀行

FMコストの見える化とプロセス再構築への取り組み

CAD・CAFMからBIMへ

JFMAフォーラム2016においては、メインテーマが「イノベーション」ということもあってかBIM を前面に出すブースが目につき、CAFMという言葉が盛んに使われていた時代の人間からすると隔世の感を禁じ得ないが、同時にわれわれが歩んできた道が誤っていなかったとも確信した。

そもそもコンストラクターにおいてCADはモノ造りの道具であるが、出来上がったモノの使い手や管理者にとっては、+αの情報がなければ道具と成り得ない。
それ故にCAFMという言葉が使われていたのだと思うが、具体的には図面データに連携したテキストデータが必要で、それがCADからも見え、テキストのDBからもつながっていることがFMツールとして必要な要素と考える。
その点ではCADがAided(支援) なのに対し、BIMはInformation Modeling(造形)を名に冠する通り、情報により造り上げることを前提にしており、造る側からの情報と使い管理する側の情報の一元化を可能とする。
われわれの目論見は、当然ながらBIMの開発を目指したわけではないが、考え作り込んできたものと同様の考え方として浸透してきているのは感慨深い。

施設管理と管理会計

事業用不動産主体の銀行において、FMは当時バックオフィス業務に追いやられがちであったが、経費と投資の管理を核として「施設」の管理情報と企業会計を連携し、経営基盤の一角に位置付けることを目的としたプロセスの再構築がこの取り組みの骨子となる。

面積を主体とした管理会計との連携から、契約管理や中長期営繕計画などをCADと併設したDB(データベース)に構築することは、当時そのネタを整えることが容易でないのは明白であった。
財務部門やIT部門をはじめ複数の関係部門を巻き込んだことに加え、そのスコープは全行的に拡大したが、われわれの主題は企業会計(財務/管理)とCADを含めた施設管理の一体化によるFM業務としての再構築であったことに変わりはない。

管理単位の設定

統合後の混沌とした環境下においても、体系的に整備を進められたのは、管理単位の設定とその統一に他ならない。
具体的には、物件(=拠点)の下に建物、施設、部屋と階層的に細分化、最小管理単位を部屋に設定。
CAD上の区画(ポリライン)とDBの管理単位を整合。
ERP連携の単位は施設(=部門)に紐付け、その属性情報をCAD(ポリライン)にも持たせると同時に、DB側にもこれらのIDをキーとしてCAD連携情報を保有。
各管理単位別の属性と面積把握から、建屋単位の発生コストや部門固有の発生コスト等を明確化して、またがるものについての適切な配分を可能としている。

実装機能としても「契約管理」や「中長期修繕計画・管理」等の機能において、単にDBとして構成するに留まらず、先の管理単位と紐付けた運用としており、発生するコストもしくはアセットについても一連の業務運用を実現している。

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今後の時流

われわれが乗った時流は、日本版SOX法による財務統制や管理会計など、企業内の管理スキームが変遷する時期でもあり、これに乗った抜本的な見直しの動きがトリガーでもある。
今後どのような時流に乗って使い手が保有するCADデータはBIM化されていくのか。それは2020年より前なのか後のことなのか。BIMデータのメンテナンスは使い手のルーティンにうまく落ちるのか。これからの時代、こうした造り手と使い手のGAPを埋めるマネジメントがFMの大きな課題となるのかもしれない。はたしてついていけるか、と還暦が忍びよる身においては危惧するばかりなのである。

●サービス提供者
・みずほ情報総研株式会社
・大成建設株式会社

●講評
ERP活用により企業会計と施設管理を一体化したFM業務再構築活動。ブラックボックス化され、一般には不透明な部分の多い銀行業界にあって、ユーザー部門を含めた管理データの透明性=「見せる化」を図ることができている点が高く評価された。FMデータの構築と活用が中心ではあるが、保守的な銀行業におけるFMの好事例といえる。
注:ERP(Enterprise Resource Planning) とは、企業の持つ様さまざまな資源を統合的に管理・配分し、業務の効率化や経営の全体最適をめざす手法。また、そのために導入・利用される統合型(業務横断型)業務ソフトウェアパッケージ