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【FM玉手箱】衝撃的だったネパールの大規模土石流

【FM玉手箱】衝撃的だったネパールの大規模土石流

粟野 慎介    あわの しんすけ

NTTアーバンソリューションズ 執行役員

8月26日に起きたネパールの土石流は信じられない規模と破壊力をもって人々と街を飲み込んでいった。死者は1000人を超え、まだ多くの人々が行方不明である。ヒマラヤの標高5200m付近の斜面で氷河を含む岩盤が1200m下まで崩れ周囲の岩や土砂を巻き込みながら時速167㎞/時の猛烈な速度でトリシュリ川を駆け下っていった。世界中の科学者が原因を分析しているが、気候変動による氷河の後退・崩落と永久凍土の融解が原因と言われている

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2019年の報告書で、温暖化によってヒマラヤの氷河が解け、大規模な雪崩や洪水を連鎖的に引き起こすと予測していた。まさにこれが起きてしまった。米CNNによると2010年から行われていた自然災害監視・予測に関する研究プロジェクトへの資金援助をトランプ政権が中断したという。2026年度まで続く予定であったこのプロジェクトは、衛星データなどを活用して土砂災害などの自然災害危険地域を把握し下流地域の住民の備えを支援するものだったが、突然の中止であったため他機関に引継ぐ時間もなかった。もしこのプロジェクトが継続されていたら多くの人命が救えたかもしれない。危険は継続したままであり、世界中の雪氷圏で危険な土砂災害が起こる可能性がある。

世界中で異常気象による災害が続いている。スペインやフランス、カナダなどでの山火事、欧州の熱波・猛暑、モザンビークやインドネシアの大雨による洪水などなど。エルニーニョ現象により世界の海面水温が史上最高を観測していて、これが異常気象を引き起こしていると言われている。日本においても、線状降水帯による大雨がもたらした千葉や北陸の洪水、西日本の異常な猛暑や茨城に上陸し東から西へ移動した異例の台風などのさまざまな気象災害が頻発している。

気候変動によるこのような事態は、もはやひとつの国の責任で対処することは難しく、本来は二酸化炭素排出量の大きい国々を中心に国際的な枠組みによる支援が必要だが、アメリカや中国が前向きでないならば、日本は大きな役割が果たせるのではないかと思う。センサー・カメラなどによる監視システム、衛星データ活用、AIによるデータ分析やシミュレーションに関連する技術は軍事利用の側面が大きいが、このような最新のテクノロジーは平和利用にこそもっと使われるべきだと思う。

「FM玉手箱」は、ファシリティマネジメントを実践するプロフェッショナルによるエッセイシリーズです。FMへの想いや知見を詰め込んだ“玉手箱”(=価値ある情報が詰まった箱)として、JFMAジャーナルオンラインでお届けしています。