
公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会 会長
よねくら せいいちろう
日本の国際競争力低下や厳しい財政状況という現状を直視し、無駄の多い働き方や既存ストックのあり方を見直すことが急務になっています。日々使う「ファシリティ」を経営資源として戦略的に活用・リユースしていくことこそが、日本の生産性を向上させイノベーションを生む道筋です。
昨今の大規模な改築や施設再整備においては、建設費の高騰や人手不足などを背景に計画の見直しが多発しています。また、スクラップ&ビルドにより排出される廃棄物やCO2は膨大であり、その環境負荷も課題となっています。「壊して建て替える」時代は終わりつつあります。
JFMAは、都市や地域の施設再整備において、これまでのスクラップ&ビルドを見直し、「既存ストックの徹底活用」への転換を提唱します。わが国に存在する約 3,000 兆円の不動産ストックを壊すことなく有効活用することで、莫大な投資(キャッシュアウト)や環境負荷を軽減するだけでなく、建物の資産価値や文化的価値にも貢献できる可能性もあります。当協会は、官民および各業界が連携し、以下の 3 つを柱とする社会的な取り組みを推進することを提案します。
・「⾧く大切に使う」マインドへのパラダイムシフト
・建物の⾧寿命化と「ライフサイクル重視」
・「アダプティブ・リユース(適応再利用)」の積極的導入

JFMA理事・フェロー
いたや としまさ
国内における土地を含めた不動産資産は、約3,000兆円にのぼり、金融資産に次ぐ重要な国家資産を形成しています。資源や国土の少ないわが国においては他国と肩を並べることのできる数少ない資産であり、不動産ストックのさらなる有効活用は最も重要なテーマといえます。
建物の寿命は法定耐用年数ととらえがちですが、実際の建物はもっと⾧く活用されています。早稲田大学の小松幸夫先生の研究により、建物の平均寿命が約70年であることが明らかになっており、法定耐用年数(鉄筋コンクリートでは47年)は実態に合わないことが指摘されました。
適切な維持管理を行えば寿命はさらに延びる可能性があり、法定耐用年数を超えたから価値がないと判断して取り壊す手法は、実態にそぐわなくなっています。

JFMA理事・フェロー
にたない しろう
「アダプティブ・リユース(適応再利用)」は、役割を終えた建物を新しい用途に合わせて再利用する手法であり、建物のライフサイクルを最適化する手段として注目されています。経済的メリット(建設費削減・工期短縮)、環境的メリット(エンボディッドカーボン削減)、文化的メリット(時間の堆積による文化継承)の3つの利点があります。
既存ストックの活用には、FM的視点による維持管理や⾧寿命化、さらにはアダプティブ・リユースの手法が不可欠です。
JFMA賞受賞事例の中にも、青森県庁舎の減築による耐震改修、安井建築設計事務所による築60年以上建築の改修、世紀を超えて変革と挑戦を続ける第一生命本社ビルの取り組みなどがあります。